鳥にトレーニングは必要?目的は?
コンパニオンバードは、近年ペットとしても人気のコミュニケーションをとる事の出来る鳥の事で、中型以上のオウムやインコの事を言います。
ただこうしたコンパニオンバードの飼育をお考えなら、ある程度のトレーニングは必要だと考えた方が良いでしょう。
小型のラブバードやコンパニオンバードはとてもよく懐きますが、放っておくと大好きなはずの飼い主さんにさえ、容赦なく噛みつきます。
また、この時にきちんと修正をしなければ噛み癖、呼び癖などの悪態が定着するようになりますので、予防のためにもトレーニングをしておくと、より素晴らしい生活を送る事ができます。
私はコンゴウインコの幼鳥を飼っていますので、その子の将来の為、何が何でもあきらめずある程度のトレーニングを入れる事を決意しました。
トレーニングの目的とは
社会性と協調性の育成
実は、鳥にトレーニングを入れる最大の目的は、雛の内から社会性を身に着けさせる事にあります。
社会性を身に着けた鳥は協調的になります。
そうなれば、その子が将来どのような不遇な運命によって新しい家庭に迎えられようとも、誰からも末永く愛される鳥になるからです。
家族の内のひとりだけに懐いていた鳥は、身内でさえも受け入れず、噛みつき行為や呼び鳴きが増悪し飼育の継続が困難となります。
特に特定の人を呼びつける呼び鳴き・朝夕の絶叫は、手放される原因のほとんどです。
そのような鳥は保護をされても受け入れ先がなく、運よく受け入れられてもたらいまわしになる恐れがあります。
その為、最初に迎えた家庭での過ごし方は、その子の運命を決定するものであると言えます。
開始時期はいつでもいいの?
通常鳥のトレーニングを開始する時期は、小型なら1歳までに、中型なら2歳までに、大型なら3歳までに行うのが良いとされています。
ですがこれは、この時期でなければトレーニングができないということではなく、雛から幼鳥の時期にトレーニングを入れる方が楽、という意味になりますので、その気になれば成鳥からでもトレーニングを開始できます。
ただ、成鳥になってからの場合、教えるにも根気がいりますので、長い目で見てあげる心構えでいましょう。
雛や幼鳥ではなく既に1年以上の個体をお迎えした方の中には、根気がいるならトレーニングはほどほどで良いかな、とか、確実に訓練できるのかもわからないならしなくてもいいかな、と思われるかも知れません。
ですが、コンパニオンバードやラブバードは、トレーニングをする事で社会性を身に着ける事ができ、誰からも愛される美しい鳥へと変化していきますので、その子の可能性を信じて是非調教をしてみてくださいね。
必要な行動とトレーニングとは?
トレーニングの内容を見る前に、その意義を知っておきましょう。
社会性を習得するには行動
社会性を習得させる目的の代表的なものは以下が挙げられます。
- 臆病でも攻撃的でもない成鳥にする
- 静かでも騒々しくもない成鳥にする
- 人と適度に遊び、一人遊びもできる成鳥にする
この目的を達成する為に特に重要な行動は、以下になります。
- 望ましい行いをしたときにはほめる
- 望ましくない事をしているときは、反応をしない
- 体罰を与えない
- 鳥に噛みつき癖をつけない
- 鳥に選択肢を与え、選ばせる
- 特定の人への固執や縄張り意識を持たせない
こうしたしつけは日常に見られる場面でその都度行います。
行動を定着させるには訓練
一方訓練は、ある程度の時間を確保して鳥に一定の行動を定着させたい場合に行います。
個人的に入れておくと良いと思うトレーニングは以下になり、番号はトレーニングを入れるステップの順番になります。
- 手乗りにする事ができる
- 自分からケージに戻る事ができる
- 手乗りで外へ散歩に出られる
- 呼び戻し(フライト訓練)ができる
- 「こんにちは」「バイバイ」などの挨拶ができる
これらのトレーニングは、先ほどお話しした社会性を身に着けられるようにする上でとても役立ちます。
トレーニングは鳥にとっても人にとっても楽しいものが望ましいのですが、鳥にとって最も重要な事は、自分の身が安全な環境にあるかどうかです。
その為、飼い主や訓練者の手の上が最も安全な場所であると言う事を教えるトレーニングをする事が必要です。
手乗りになると生活は豊に
私はコンゴウインコ飼いの為、このブログも中型以上の鳥を前提にお話していますが、以下の事がスムーズに出来れば手乗りが完成したと判断できます。
- 手乗りの状態で訓練食以外を食べる事ができる
- 訓練食がなくても長時間、手乗り状態を保持できる
- 手乗りで訓練者が移動(歩行)する事ができる
- 止まり木から手へ、ケージから手へと一回で移動できる
この4点がスムーズにできるようになったら、ケージに速やかに戻すなど次のステップへ移ります。
手乗りトレーニングは、手の上が最も安全であると教え込む場ですが、鳥にとって手乗りの状態は最初はかなりの恐怖を伴うものです。
特に慣れない飼い主が行うトレーニングは、鳥の脚と訓練者の手の位置、鳥の乗せ方やタイミング自体が未熟である為、鳥は不安定な状態に置かれます。
手に乗ったからと安易に手の位置を動かすと、それが未熟であった場合は鳥を落としてしまう事もあります。
その為、手の上で安定した状態の確保を確実にできてからステップアップを図りましょう。
最初は地味なトレーニングですが、重ねるごとに訓練者自身も上達し、鳥も安定した姿勢を保つようになります。特に手の上でくつろぐ様子が見られるようになれば、ステップアップもはかどります。
手乗りにする事ができれば、愛鳥への思いは一層深まりますし、飼育者・訓練者にとってもそれから先の訓練がかなり楽しいものになるはずです。
荒鳥も手乗りになる
荒鳥とは、なかなか人に懐かず、人が近づくとケージの中で暴れたり、触れようとする者に容赦なくかみつく鳥の事を言います。
この様な鳥は、幼鳥期にしつけや訓練をされなかったり、飼育放棄、虐待を受けるなど、何等かの問題を抱えたまま生活してきた可能性が高いようです。
一般に鳥を手乗りにするには、雛の内からトレーニングをしておかなければダメと思われがちですが、成鳥になってからでもきちんと訓練することで手乗りにすることができます。
手乗りにした方がいいの?
荒鳥になってしまった鳥も、手乗りにしなければいけないのでしょうか?
私個人としては、寿命の長い中型以上の鳥ほど手乗りトレーニングは入れるべきだと思います。
何故なら、トレーニングを入れる事でハーネスやリードをつけて外へ散歩に出かける事が出来、人に接する機会が増え、自然に社会性を身に着けられるからです。
また外でトレーニングが出来れば、鳥との信頼関係関係をより一層深める事が可能になります。
何よりトレーニング課程の一つ一つにはそれぞれ意味があり、飼い主がそれを守る事で、飼い主自身の鳥への接し方が修正でき、いわば飼い主の為のトレーニングにもなるからです。
トレーニングを通じて人(他者)との社会に慣れた鳥は、将来どのような環境に置かれても、そのおかげで速やかに順応できるようになります。
トレーニングが思うように進まなければ、飼い主が自信をなくし、いっそ飼い主にだけに慣れてくれればいいと思う事もあるかもしれません。
ですが中型鳥の寿命なら30年以上、大型鳥であればその寿命は50年~80年以上とも言われています。
となれば飼い主との別れの日はある日突然やってくる事は、決して他人事ではありません。
次の飼い主を迎える必要が生じたときに、今と変わらず、いえ、それ以上に幸せになってもらう為にも、鳥のしつけやトレーニングは、飼い主の義務と言える時代になったのかもしれませんね。
手乗りトレーニングの実際
ここでは、コンゴウインコの幼鳥を用いて手乗りにした過程をご紹介いたしますが、小型の鳥でも手乗りにする為の基本は同じになります。
ご紹介するコンゴウインコは、トレーニングを始める前は手を出せば噛みつくような個体でしたので、本当にトレーニングが入るのか、いつになったら手乗りにする事ができるのか、私自身とても不安でした。
ですが、どのような本を見ても、信じて気長に根気よく行う、とありましたので過大な期待は持たず頑張る事にしました。
トレーニングの概要
ステップアップ練習
トレーニングメニューは、鳥の大きさに関わらず同じものになり、基本的には餌を与える距離を縮める事で、手や腕に自然に乗るようになるまで行います。
またトレーニングをするときには、「ステップアップ」と言って、トレーニングであることを伝えましょう。
小型~中型鳥ではケージの中に手を差し出して、ケージ内で手に乗る事を最初に覚えさせ、ステップアップとして手から止まり木へ、止まり木から手へ、手から手へと移るように練習します。
一方大型鳥の場合はケージ内ではなく、ケージの外で訓練を行いますが、可能ならケージの見えない別の場所で行います。
これは、ケージの見える場所や見慣れた場所では、縄張り意識を持ち、攻撃性が高くなる為です。
攻撃性を予防するには
こうした攻撃性を予防する為には、見知らぬ土地に連れ出すことも一つの手です。
縄張り以外の場所、特に初めて知る外界では鳥も不安に思います。そのため唯一頼ることができるのはその人だけであると認識させる事で、絆を深める事ができるからです。
このような心理作用を利用するのは、鳥に嫌われている人になつかせたい場合にも有効で、その人が外に連れ出す事で、その人しか頼る人がいない事、その人に守られている事を知り、自然に受け入れ、信頼するようになるのです。
トレーニングに挑戦する個体を紹介
- 購入日:2024年4月22日
- 年 齢:11か月(推定)
- 名 前:サファイア
- 性 別:男子
- 給 餌:一人餌。人から餌をもらうことは可能
- 性 格:荒ぶれ者 警戒心が強い=無駄鳴きはしない
- 趣 味:かじること
- 身体上の問題:羽根破壊行為やストレスハンガーのマークあり
コンゴウインコとは
ハルクインコンゴウインコは、ルリコンゴウインコと紅コンゴウインコを掛け合わせてできたコンゴウインコで、前頭部の毛の一部は赤いですが、頭頂部から肩にかけては緑色で、風切り羽根から尾羽根は青、胸はオレンジ~赤色になり、羽根の内側は黄色と何とも派手なインコです。
コンゴウインコの中でもハルクインコンゴウインコは特に大きく、世界最大とも。
ルリとベニの双方の性質を受け継ぐと言われ、体色は父親の特徴をより強く受けると言われています。
コンゴウインコの種類は豊富で、現在はハイブリッド種も多くあり、ハルクインコンゴウインコや、カタリーナコンゴウインコ(ルリコンゴウインコ×アカコンゴウインコ)はその代表と言えます。
ちなみに、紅コンゴウインコもアカコンゴウインコも体色は赤ですが、違いは目の周囲に縞模様があるかないかです。
縞模様があるのが紅コンゴウインコ、縞模様がないのがアカコンゴウインコです。
※白目の部分は成長するにつれて色が変わり、雛は真っ黒く、成鳥では白くなります。幼鳥はその間でグレーになり、私がお迎えしたハルクインコンゴウインコがそうです。
トレーニング前の身体状態
サファイアは、もともと狭いケージで飼育されていたそうで羽根の状態がとても不良でした。
こうした脆弱な羽根では、飛行に影響が出ます。
羽根に現れるストレス
鳥がストレス下にある場合、特徴的な羽根のマークがみられます。これをストレスハンガーマークと言い、特に換羽期の栄養不足や厳しいトレーニング下で見られます。
私はコンゴウインコの他鷹を飼っており、換羽期(トヤ)にはストレスを与えないよう細心の注意を払います。
鷹のトヤ入りでは強く美しい羽根が生えるようにサプリメント(猛禽類用)を与えていますが、特に重要なのは餌量の制限を行わず、体重を増やす事です。
トヤ入りしたら訓練中には押さえていた餌量の制限を止め、体重をマックスまで増やします。この時期に体重をマックスにする事でトヤ明け(換羽期が終わる事)からのトレーニングを再開する餌量を決める事ができるのです。
その為、鷹にとって換羽期の食事は単に綺麗な羽根、強い羽根を得る為だけに必要なのではなく、緻密な体重コントロールをする事でどのような状況でも必ず戻ってくるように仕込む為にも重要な要素なのです。
コンゴウインコの換羽期
インコの換羽期は春と秋の2回で、羽根が生え変わるには半年かかると言われています。この時期は精神的ストレスからいらだつ事が多いようです。
トレーニングをする場合は、ある程度空腹にさせなければなりません。
ですがサファイアは羽根に多くの問題を抱えていましたので、厳しいトレーニングは避け、インコ用のサプリメントを与えながら、まずは栄養を十分取れるように配慮する事にしました。
お迎えから2週間ほどはあまり刺激を与えないように過ごし、5月中旬ごろから手乗トレーニングを開始しました。
警戒心が強いせいか幼鳥ながらすでに性格は荒く、体に触れようとすると噛みついてきますが、幸いサファイアは、人の手から餌を食べる事ができたので、この事が訓練をスムーズにさせてくれました。
初めての手乗りトレーニングと準備
手から餌を食べる事ができる
まずは、人から餌を食べる事ができなければなりません。
もし初めて手から与える場合にはまずは親指と人差し指でつまんだ餌を食べる事ができるようにします。
それが慣れたら手のひらに餌を置いて食べられるようにし、手への恐怖心がなくなるようにします。
これができると、トレーニングはスムーズになりますので最初の関門と言えます。
餌は大好物を与える。
トレーニングでは、まず、大好きな餌を使用します。手乗りトレーニングに関わらず、基本は餌で釣る事です。
トレーニングは鳥も人間も楽しみながら行う事が望ましく、一つの行動が出来れば、ご褒美のおやつをもらえる、ほめてもらえるという事を教えます。
サファイアが最も好きな食べ物はひまわりの種でしたので、一つ作業が出来たらこれを毎回与えるようにしました。
ただインコにとって種子の与えすぎは脂質過剰になりますので、ある程度進んだら与える量は減量します。
トレーニング方法に固執しない
トレーニングを進めて行くとうまく行かない時がありますが、その時は、方法を変更し、やる気が起きるような工夫をします。
またその日の訓練を終了する場合は、必ず命令をこなした時にし、パニックに陥らない限り、きちんと命令に従うまでは元の場所に戻さないようにします。
トレーニングの記録
では、実際に行ったトレーニングをご紹介いたします。
訓練開始:ケージのない部屋で餌を食べる事ができる
5月2日:訓練初日
はじめにしたことは、ケージのない部屋で餌を食べ、遊ばせる事でした。
部屋から部屋への移動はキャリーケースを使用しました。
この時期、私にはまだ移動できる術がありませんでしたのでキャリーに乗せるしかないのですが、これは、キャリーケースに慣れてもらうという意味もある為、併せての訓練になります。
サファイアは窓のサンに乗りたがるのでそこで、ひまわりを与えるようにしました。初日初めての部屋でも幸いパニックもなく餌を食べる事が出来ました。
左腕に乗ってもらう事を考えていた私は、当初サファイアを私の左腕の外側に配置して餌を与えていました。
ですが、私の思惑とは裏腹に私の腕に足をかけるような事はなく、その日は首を伸ばして餌を食べるだけで終了しました。
5月3日:訓練2日目 頸が届く位置に餌を差し出す
サファイアは人の手から餌をもらう事はできたのですが、人に触れられる事をとても嫌がる子で、手を出そうものなら噛みつこうとします。
その為最初にする訓練はまずは、自ら私の手に足を乗せる事ができるようになることでした。
その為、少しでも私の腕に乗りやすくなるようにとサファイアを左腕の外側に配置し、右の手のひらの上に数粒のひまわりの種を置いて、腕に乗らなければ餌を食べられない状態へと持って行くようにしました。
初めは左腕の近くに右手を差し出し食べたら徐々に離すのですが、私の左腕の外側から右手に上手に首を伸ばすだけで、まだ私の腕や手に足をかける事はありませんでした。
更に、首が届かない位置ではもはや餌を食べようともせず、後ずさりするなど私の傍を離れたがるようでした。
私自身、噛みつかれることへの恐怖からあまり無理な事はせず(できず)、とにかく私の事を好きになってもらうにはどうしたらいいのか不安に思う日々でした。
この日も到底体に触れてもらう事もなく終了せざるを得ませんでした。
この状態が数日続きました。
5月10日:訓練8日目 私の体調不良でトレーニングを中止
この日私は喉の痛みを自覚したのでインフルエンザ若しくはコロナ感染が考えられたので、早々にマスクを着用する事にしてトレーニングを中止する判断をしました。
体調が悪いと感じたら、マスクと手洗い・手袋着用を励行して、素早くケージに餌をセットして部屋を立去ります。
5月11日発熱:病院に行きコロナ感染確定
私はコンゴウインコの他に、鷹を1羽所有しフライトトレーニングを行っています。
鷹にしろコンゴウインコにしろ、そうそう近所の動物病院で診察、という訳には行かない(特に猛禽類はなかなか診てもらえない)ので、彼らの健康への配慮は細心の注意が必要です。
コロナは症状が治まっても隔離期間が明けるまでは鳥に接する事ができません。
その為、購入して放置していた止まり木をこの期間に組み立てる事が出来、更に飼育本を熟読出来ました。
一方でコロナによりトレーニングを中止した事への影響がどのように出るか不安にも思っていました。
5月17日:訓練10日目(訓練再開) 手の上で餌を食べる
当初止まり木をすぐに使用するつもりでいましたが、サファイアとのコミュニケーションが全く取れず、到底使用できる状態でもなかったので、どのように進めたら良いか常に色々悩んでいました。
とは言えトレーニングを再開しなければなりません。
17日もいつもの様に窓のサンに乗りたがるので、そこで餌を与えていましたが、この日初めてサファイアが手の上にずっと乗って餌を食べてくれました。
訓練の中断によって好物のひまわりを食べられなかった事もあるかと思いますが、この日にいつもと違ったのは、サファイアを私の右側に置いて訓練をしていた事で、それが一番良かったように思います。
いつもは、サファイアが私の左腕の外側へ来るようにしていたのですが、この日の私は本当にこの子が手乗りになるのか訓練への迷いから、右手側に来ていたサファイアの位置を直す意欲もなくそのまま餌を餌を与え始めました。
餌を食べ始めたらいつもの様に少しずつ、腕に乗るように餌を嘴から遠ざけます。
すると開始から間もなく左手に乗り始め、それを維持しながら次の餌を食べるようになりました。ずっと手に触れていたのは、この日が初めてでしたので本当にうれしかったです。
サファイアにしてみると、私の左腕の外側から乗る事は高さがある為、慣れていない飼い主の場合は警戒心から乗る事ができなかったようです。
その為この時期のトレーニングは、左腕の内側から手の甲を見せて腕を出した方がのりやすいようです。
手に乗る事ができるようになってもこうした状態が定着するように、2~3日は同じように手の甲にのる練習を行い、徐々に変化を与えていくことにしました。
5月21日:訓練14日目:腕に乗る
手の甲に乗ることができ、サファイア自身が私の腕に対する恐怖心が軽減したようでした。
部屋への移動は相変わらずキャリーケースを用いましたが、出すときにはトップに上がりたがります。
その為この日は私は床に座って、キャリーの上でトレーニングをすることにしました。
トレーニングが進まない時は、何等かの問題があると思いますので、向きを変える、高さを変える、餌を変える、場所を変えるなど方法を変えると良いでしょう。
5月27日:訓練20日目 止まり木から初手乗り
これまでのトレーニングでは私は床に座り、窓のサンやキャリーケースの上に腕を置いて、サファイアを腕に乗せるようにしていました。
が、ここで新たな問題が出てきました。
何しろ世界最大のインコと言われるハルクインコンゴウインコは体重1.1Kgです。不安定なインコを腕に乗せた状態では、私が立ち上がる事が出来なかったのです。
その為組み立てた止まり木(ステンレスケージ)を使用する事にしました。
本来トレーニングはケージの見えない部屋で行うのですが、移動手段をまだ持てない私は、ケージから手に、手から止まり木に移す事すらできません。
なので、ケージの傍に止まり木を置き、サファイア自身に直接止まり木に移動をしてもらう事にしました。
止まり木は幸い滑車付きなので、移動後はケージから離して訓練を行いました。
ケージの高さに合わせて手を添え、少しずつ餌を離す
腕に乗りやすい高さは、現在留まっている場所と同じ高さ、同じ位置です。
片足に続き、両足を乗せますが、不安が強い場合にはすぐに片足を止まり木へともどし、何度となくその動作を繰り返しました。
これは鳥が不安に思っている証です。
ようやく両足を乗せたとしても重心が悪い場合には訓練者はアクションはせずにじっとしています。
餌を与える間が空くと手から降りようとするため、食べている最中に好物を見せ夢中にさせます。
少しずつ、バレないように上に持ち上げ、餌を与えます。降りる時もバレないように下ろします。
この時そこが安全かどうか強く不安に思っています。
持ち上げるときの注意
鳥が片足をかけたときに腕をひょいと持ち上げればもう片方も乗せるようにも思いますが、この時はまだ腕への信頼はないため不用意に腕を上げてしまうと、人の手を怖がるようになるので、まずは、揺れたり不安にさせないように訓練者はじっとしています。
これを何日か繰り返すと、次に必ず両足を乗せてくれます。
実はこの日初乗りに成功したことで調子にのった私は、翌日、軽い気もちで持ち上げようとして失敗をし、畳の上にサファイアを落としてしまったのです。
幸い怪我はありませんでしたが、鳥は私たちが思う以上に慎重なのだと知り、以後、焦らずに練習を進める事にしました。
止まり木から離れた位置で手に乗る事ができる
安定した状態で手の上に乗る事が出来たら、次のステップである、少し離れた場所に足をかけて、移る事が出来るようにします。
これは、止まり木に手を寄せるとすぐに止まり木に戻ろうとするため、少しでも戻りにくい状況を作る為にしていました。
最初は片足から指や腕に乗れればそれで成功です。焦らず、片足が乗ったら必ずご褒美の餌を与えます。
5月30日:訓練23日目 自ら足を乗せるように
私の手を恐れていたサファイアでしたが、この頃になると、足を出せば餌をもらえると学習をし、私が腰の餌入れに手を当てると右足を私の腕に乗せるようになりました。
こうなると私自身、訓練への自信がついてきます。
このまま止まり木から離れた位置に腕を出し、簡単には引き返せないような位置で手に乗る事に慣れさせる訓練を継続しました。
6月1日 訓練25日目 室内を移動する事ができる
止まり木から手へ、手から止まり木へと行って、安定した状態が保てたら、室内を歩行して移動します。
ゆっくり、餌を与えながら室内を歩きますが、この時サファイアは移動している事を認識していたようです。
両足に力が入りますが、餌を食べる事に夢中になっていたので室内を歩く事が出来ました。
6月8日 訓練33日目 手乗りを移動手段と認識?
いつもは餌を一つ食べるとすぐに次の餌を催促してくるのですが、この日は催促をせず、ケージの方に行きたがったように思えました。
なので、そのままケージに腕を近づけるとそちらに行きました。
好物の餌を食べる為だけに乗っていた私の腕を、サファイアが移動手段として初めて認識したのかなあと思いました。
移動手段を持つと行動範囲は大きく広がり、外出する事も可能になります。そしてこの外出こそ大きな意義があるのです。
移動する為に飼い主の手を必要とする行動的依存は、飼い主が必要な存在であると知る事でもあり、信頼関係を構築する上では重要な要素になります。
特に、外という見知らぬ場所、見知らぬ人、見知らぬ乗り物がある環境では、『頼れるのは唯一、飼い主だけ』という状況になり信頼関係の構築に大きく影響を与えるからです。
6月17日 訓練41日目 部屋から部屋へ移動する事ができる
いよいよ部屋から部屋へ移動するようにしましたが、この時期の訓練はかなりスローペースで進めていました。理由は、まだ外へ行く事ができない為焦る必要がなかったのです。
手乗りが安定しても、街中では車のクラクションや飛行機の音、また子供の声といった不意の騒音から驚いて、逃げようとして飛び立つ恐れがあります。
その為外へ行くには必ず安全確保のためにアンクレットやハーネスなどをつけなければなりません。
たとえクリッピングをして遠くに飛ぶことができなかったとしても、車道やアスファルトに落下をすれば身体の損傷を免れません。
クリッピングとは、飛べないように羽根をカットする事。しっかりクリップしても驚いた時には十数メートル飛んでしまいます。
サファイアは、この頃手に乗せる事は出来ても、いまだ身体に触れようとすれば嫌がって噛みつきます。
加減はしているようでしたが私には恐怖感がありましたので、ハーネスもアンクレットも私が一人で装着する事は出来ませんでした。
ハーネスを装着し外出できるようになったのは、10月1日、お迎えから約5ヶ月弱の事です。
私の彼に対する心境の変化が大きな転機となりました。
6月22日 訓練46日目 2階から1階へ階段昇降
順調にトレーニングが進み、初めての階段昇降はとても静かにすることができました。
が、実はこの日、私はサファイアが落ち着いて階段昇降ができたと思っていたのですが、翌日の同じ訓練では羽根を広げて警戒していたので、初日の落ち着きは単に未知なる事象への恐怖のあまり、身動きが取れずにいただけかもしれません。
幸い、パニックになってバタつく事はなかったので、階段昇降を毎日の日課にしました。
手乗りができなかった頃は…
お迎えから1か月後、検診のため初めて車で外出をしたことがありました。
当時はまだサファイアを腕に乗せて階段昇降ができなかったので、まずはケージのある2階の部屋で大きなキャリーケースにサファイアを入れてから1階へ運ぶしかありませんでした。
この作業は一人では到底不可能なため、姉に協力を得て二人がかりで降ろしていました。
ですが、今は腕に乗せて階段を下りる事ができるので、移動が大幅に楽になりました。
訓練の振り返り
階段昇降ができるようになったころには、ケージトップであろうと、止まり木であろうと、腕を差し出せば1回で腕にのるようになりました。彼も私も、手技に自信がついたのです。
警戒心が強い子でしたので、もっと時間がかかるかと思いましたが、手乗りトレーニングは意外とスムーズにできたのではないかと自分では思っています。
人や場所が変わってもパニックを起こさない、この事はトレーニングを入れていく上でとても重要な要素です。
何故なら、このような個体は協調性を備えており、もともと社会性があり、どのような場所でも訓練が入ると言われているからです。その意味でもこれからが楽しみです。
とは言え、油断をすると『魔の2歳児』を迎える事になるので中型以上のインコ飼いは要注意です。
最も重要なのは、鳥のペースに合わせない
鷹のフライトトレーニングや、今回のコンゴウインコのトレーニングにも共通して言える事は、トレーニングを鳥のペースに合わせない、という事です。
5月中旬、サファイアはトレーニングをしているとは到底思っていないようで(当然ですが)、私の手に乗りながらも、自分のタイミングで好物のひまわりを欲しがりました。
その為少しの間があると、私の腕をあの大きな嘴でつついてくるのです。
私は手に乗ってくれた事が嬉しかったので、はじめはつつく行為も傷になるわけではなかった為見過ごし、要求のままひまわりを与えていましたが、これが大きな間違いでした。
次第につつく行為は多くなり、その日の内に腕に皮下出血がみられるほどに強くつつくようになったのです。
この様に、鳥は一度行動を許してしまうと必ずその行為をエスカレートさせます。
こうした事を止めさせるには、声を出すなどの反応せず、つついた直後に一旦訓練を中止(10分くらい)し(腕から下ろし)、好物となる餌を見えないようにします。
この時「つつくなら訓練は中止しましょうね」と声をかけるようにします。
罰としてケージに戻す事(タイムアウト)については、あまり効果がないと言われています。
また噛みつきのような行為の場合、腕をゆするなどすると効果がありました。
行動修正トレーニングの基本
トレーニング中、餌の催促の為に私の腕があざになるほど強くつつく行為(本人はそんなつもりはないようですが)は悪い行動である為、対策をしなければなりませんでした。
これが行動修正です。
行動修正の基本は、悪い行動をどう止めさせるかではなく、それに代わる良い行動をどう増やして行くか、になります。
例えば私は、おしゃべりをしてくたら嬉しいと思っていますので、噛「クウェッ」声を出した時にひまわりの種を与えながら「ちょうだい」と言葉を教えています。
私は8月中旬からこの方法にして、だいぶつつく(噛む)行為は減りました。ただ、何等かの欲求がある時に、いまだに噛んで注目を引こうとしているので、その辺りの行動修正についても又記事を書きたいと思っています。
もっとも、噛みつく行為やつつく行為が訓練者側に問題がある場合もあります。
訓練者の技術が未熟な為、せっかく鳥が頑張って手乗り状態を保持しているのに、バランスを崩して怖い思いをした、など(私)です。
トレーニング中のリフレッシュ
毎日のトレーニングはたとえ数分でも日課にし、継続することが重要です。
ただ訓練ばかりではお互いが飽きるので、遊びの要素を変えて時々リフレッシュすることをお勧めします。
私は、手乗りトレーニングにわずかな嫌気を覚えてしまったことがありました。
これは、サファイアは餌を食べ終わるとすぐに次の餌を催促してきますし、ないとわかると腕から降りたがり、こうした事に私が心の距離を強く感じてしまったからです。
私の腕でリラックスしてくれない、そのことがとても寂しかったですし、これから暮らしていく事へのわずかな不安になったのです。
そこで、ある日、私は早々にトレーニングを終え、サファイアのおもちゃとして河川敷で拾ってきたクルミを、サファイアがと留まっている止まり木ケージの近くで、ボールに入れて洗っていました。
すると、ケージにいたサファイアが私の傍に降りてきて洗っているクルミでいたずらしたり、ボールの中の水(洗い終わったものを入れる綺麗な方)を飲んでいたのです。
止まり木やケージトップなどは彼にとって最も安全であると思っていた私は、そこから降りてくるとは思っていなかったので、本当に驚きました。
私が思うより、サファイアにとっての私はそんなに嫌いな存在ではないのかなと、少しほっとしました。
コンゴウインコはもともと好奇心旺盛な生物の代表でもありますので、興味を引いたのだと思いますが、好きな事をさせたあげたり、同じ空間で戯れる事もまた、信頼関係を築く近道なのかもしれませんね。
終わりに
手乗り歩行が完全にできたらいよいよ外での訓練に行きたいと思っています。
何しろ、外出する事は信頼関係を構築する上でも重要な事だからです。
鷹の調教もしておりますので、そちらもよろしくお願いいたします。
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