玩具と遊び
コンパニオンバードの中には5歳児程度の知能を持つ者もあり、玩具で知的に遊ぶ姿はもはや子どもと同じに見えます。
私は現在1歳過ぎの男の子のハルクインコンゴウインコ(名:サファイア)を飼っていますが、彼らにとってどれほど玩具が大切なのか、また信頼関係を深める為に正しく与えるにはどうしたら良いのか、自分の経験を踏まえつつご紹介したいと思います。
玩具の必要性とは
コンパニオンバードと暮らすなら必ず準備しなければならないものがいくつかありますが、中でも重要なのが玩具です。
ですが、大型になればなるほどすぐにおもちゃを破壊してしまうので、毎回購入していると金銭的に継続が難しくなります。
私は飼い始め当初は、玩具選びも楽しくカラフルでこ洒落た玩具を与えていたのですが、その破壊力たるや想像以上で数分と持たずに天才的に破壊してしまいます。
そこで現在は暇を見ては手づくりしているのですが、こうした作業から今まで見えなかったサファイアの私への思いが見えたりもしたので、是非愛鳥の為にも一緒の空間で玩具づくりをすることをお勧めします。
と、その前に、玩具の考え方や与え方について改めて見ていきましょう。
飼育下での玩具の役割
インコの為には決して切らす事の出来な玩具ですが、これは単に噛み癖やストレス回避の為だけに与えるわけではないようです。
コンパニオンバードは人間に懐きやすいと言われていますが、一方で、飼育下にある場合にはストレスから悪癖が身に着きやすいのも事実です。
特に問題となりやすい悪癖は以下の6項目と言われています。
- 毛引き(羽根の自己破壊行為):ストレスを発症した時に見られる自己の羽根破壊行為でこの6つのうち最も深刻。羽根に異常が見られたらまずは獣医師に受診し、病的なものなのか判断をしてもらいます。
- 噛み癖:鳥にとってかじるという行為は自然なことですが、それが人に向けられた時、また、自己の羽根破壊行為(羽齧り)へ移行した時には問題として対処が必要になります。
- 悪い言葉や呼び鳴き:飼い主にかまってほしいがために大声で呼んだり、悪い言葉を連呼したりします。
- 極端な雄叫び:絶叫です。
- おしゃべりをしない:言葉を教えているのにしゃべらない状態です。
- 恐怖症:人が来るとパニックになりケージの中を飛び回ります。適切な大きさのケージでないと羽根を傷める原因に。
こうしたストレス症状は通常野生の鳥には見られず、特に毛引きや呼び鳴きなどは飼育下特有の問題です。
ストレスによる毛引きや齧り癖は玩具を与える事で予防や回避をしていきますが、玩具を与える上で最も重要なのはその与え方になります。
玩具を正しく与える事ができれば愛鳥との距離間は適正なものとなり良好な関係を築く事ができるようになります。
鳥さんと人間の適正な関係とは、決してべた慣れにする事ではなく、一定の距離を置いた関係を言います。
社会性と玩具との関係
玩具は単に、習性を満足させる(欲求不満の解消)為に与えるのではなく、知育や人との距離を縮める、社会性を身に着けるといった行動修正の為にも利用されます。
人間と同じ空間で暮らす以上、鳥に限らずペットにも求められるのは社会性です。
社会性とは、人間の世界で問題なく暮らす事ができる協調性を言いますが、社会性を習得させる大きな目的は、人間にとって都合の良い鳥に仕立てる事です。
つまり、愛鳥が問題行動を引き起こす根底の原因は社会性の欠如によるものであり、適切なしつけやトレーニングが出来ていない事を意味します。
社会性としつけ
社会性があると言える為には、少なくとも以下の3つの項目に該当するような鳥に仕立てる必要があります。
- 臆病でも攻撃的でもない成鳥にする
- 静かでも騒々しくもない成鳥にする
- 人と適度に遊び、一人遊びもできる成鳥にする
そしてこの目的を達成する為に特に重要なしつけが、以下になります。
- 望ましい行いをしたときにはほめる
- 望ましくない事をしているときは、反応をしない
- 体罰を与えない
- 鳥に噛みつき癖をつけない
- 鳥に選択肢を与え、選ばせる
- 特定の人への固執や縄張り意識を持たせない
こうしたしつけは、日常に見られるあらゆる場面でその都度行います。
つまり、玩具を与える時、餌を与える時、トレーニングをするときに飼い主(オーナー)が一定のルールをきちんと守り、正しい方法で行うようにするのです。
こうした遊びや食事の中で、鳥自身が自分で選択することを覚え、一人遊びを習得し、言う事を聞くようになったり、あるいは伝えたい事を適切な行動で伝えられるようになるのです。
もし、今お飼いのコンパニオンバードに問題行動がみられるとしたら、それは鳥さんの問題ではなく、飼い主さん側の行動に問題があるのかもしれません。
玩具の正しい与え方
では、正しいしつけの仕方がどのようなものか、おもちゃの与え方を例に具体的に見てみます。
選択肢を与える
最も重要な事は鳥に選択肢を与える、と言う事です。
玩具は単に、習性を満足させる(欲求不満の解消)為に与えるのではなく、知育や人との距離を縮める、社会性を身に着けるといった行動修正の為にも利用されます。
基本的には2つ以上を用意
玩具に限らず、餌の種類、止まり木なども可能な限り2種類以上を用意して与えるようにしましょう。
色・形・大きさ・匂いなど様々な物を用意して選べると言う事を教えます。
選択肢の中から選べると言うことは、知性を刺激して自信を深めさせるので、今後新しい人や物に出会った際にも恐怖心に負けない子になります。
最初に選ぶものは一番好きなものです。
齧るだけではインコの習性を満足させられない
コンパニオンバードの持つ習性には齧るという行為があり、それには物を認識したり、警戒心や嫉妬の現れの他、戯れなど様々な意味があります。
身近に齧る事ができる物があれば、せっせっと齧って静かにしていますが、何もない(退屈させる)と自分の羽根を齧るなどの問題行動に移行します。
そこで、絶え間なく玩具を与えて忙しくなるように仕向けるのですが、ただ齧らせておくだけでは、インコは満足できません。
齧る以外にも、叩きつけたり、むしり取るといった行動も楽しみの一つです。
ただし、ケージにつるしておいても無視をしたり、警戒している場合には飼い主さんが遊び方を教える必要があります。
教えるとは、実際に遊んでいるところを見せてあげれば良いのです。
例えば、他の動物がいるならその子と遊んで見せます。
コンパニオンバードやラブバードは、実は自分を一番に構って欲しいという欲求の塊と言っても過言ではないほど甘えん坊です。
その為、種類を問わず他の動物、あるいは人形でも飼い主と遊んでいるところを見せたり、飼い主さんが楽しそうにしているところを見せれば、好奇心を刺激され自然に近寄ってきます。
どんな玩具が良いのか
重要なのは彼らを忙しくさせる為の玩具ですから、最終的にはひとり遊びができる物を与えます。
齧れる物
木片を使った(既製品の)玩具なども2種類以上は、ケージ内に吊るしておくようにします。
ですが彼らは天才(親ばか)なので齧れる物はこのほかにも、衣服についたボタン、引き出しの取っ手、椅子など、彼らの手(嘴)に届く範囲の物は全て齧り、むしり取ろうとします。
なので、彼らと遊ぶときにはボタンをむしり取られても良い古着や、壊されても良い家具のあるお部屋にします。
「これしちゃだめ、あれしちゃだめ」では、嫌われる一方です。
一緒に遊べるもの
コンパニオンバードはケージ内で遊ぶよりも、飼い主さんと一緒にケージの外で遊ぶのも大好きです。
何故なら、彼らがもっとも信頼を寄せる人は、餌をくれる人でも、ケージの掃除をしていくれる人でもなく、一緒に遊んでほめてくれる人なのですから。
輪投げや積木で遊んだり、ぬいぐるみとおしゃべりをしても彼らの好奇心をくすぐります。
またお気に入りの止まり木に折り紙や布などを巻き付けておくのも良いでしょう。
上手に遊ぶことができていたら大げさなくらいほめてあげましょう。
手作り玩具は一緒に作る
私がお勧めするのは、是非手作り玩具を作って頂きたいという事です。
毎回既製品の玩具を購入するのは不経済、というのもありますが、一緒の空間で飼い主がしている事に対しては、鳥さんたちは好奇心を掻き立てられるからです。
初めて鳥さんから近づいてくれた日
私は、1歳目前のハルクインコンゴウインコ(♂:サファイア)をお迎えし、2024年の9月現在、4か月が経過したところです。
購入時、人の手から餌を食べる事は出来たのですが、手乗りはできず、私が手乗りトレーニングを入れました。
※その様子はコンパニオンバード~手乗りトレーニングと必要性~でご紹介しています。
とは言え雛からお迎えしたのとは異なり、未だ体をなでようとすると、大きな嘴でつついて嫌がります(お迎えから5ヶ月目頃)。
特にこの子は、決して良い環境で飼育されていたのものではなく、ストレスによって羽根は黒く変色していたり、途中で折れて欠損がある子でした。
詳細はこちらから➡コンパニオンバードの問題~1羽根の異常と対策~
人に対して臆病ではないのですが、身体を触るなど気に入らない事があれば当然のように噛みついてきます。
また、トレーニング時には好物のひまわりの種を与えていますが、手乗り訓練は完了しているにも関わらず、ひまわりの種をもらう時以外は、腕からすぐに降りようともします。
この記事を書いた当初(9月)は、ステップアップ訓練で腕に乗せている時、自分のペースで好物のひまわりを催促する為、私の腕を噛む行為が頻回にありました。ですが、現在は発語(言葉)によって欲求を表す事ができるように行動修正し、またひまわりの種がなくても腕に留まるようになりました。
距離間を感じていた8月のある日、昨年河川敷で拾った和胡桃を持て余していたのを思い出し、玩具を作る事にしました。
サファイアを止まり木ケージに乗せておき、私は床に座ってボウルに水を張り胡桃をブラシで洗っていたのですが、心の中はいつものように、どうしたらサファイアに私を気に入ってもらえるのかと、そんな事ばかり思っていました。
ですが、作業を初めて間もなく、サファイアが自分から私の方へ近づいて来て、ボウルの水を飲んだり、胡桃を齧ったりしながら遊び始めたのです。
私はてっきり嫌われているとばかり思っていたので、こうして自分から傍に寄ってきてくれた事に本当に驚きましたし、とても嬉しく思いました。
私が思うより私に慣れてきているのかも知れない、と思った瞬間でした。
ですが、4か月が過ぎた今も相変わらず、体を触らせてはくれず、信頼関係をどうしたら築けるのか、この頃はいつもそんな事を考えていました。
10月現在、私とサファイアの関係に大きな変化がありましたので以下の記事を投稿しました。
手作り玩具の作り方
準備する物
- 和胡桃:地元河川敷に自生
- 木 片:ホームセンターの詰め放題で購入
- インパクトドライバーと穴開け用ドリル
- ビニール紐・ロープなど
- 絵 具:なくても良い
- その他:折り紙の鶴やへちまなど何でもよい
ボウルに水を張って胡桃を綺麗に洗います。
インパクトドライバーなどの穴あけ用工具を使用してクルミと木片に穴を開けます。
くるみや木片、折り紙を、頑丈な紐に交互に通して出来上がりです。
ナッツ類は脂質が高いので、一日に食べる量は制限するようにします。
和胡桃について
普段食べる機会の多い市販の胡桃は洋胡桃で、和胡桃に比べると殻は柔らかいです。
和胡桃は河川敷に自生している事が多く、鬼ぐるみ(丸っこい)と姫ぐるみ(やや長い)があります。
6月には実が付き始め綺麗な緑色の実が徐々に大きくなり、8月には色が茶色に変わり始めます。
9月頃には台風のあとなどに、青い実が落ちています。
10月頃には完全に色が茶色になり、下旬には木から落ちるので、足で外皮をむいて中身(殻の付いた実)を取り出します。
実が熟れているなら中の胡桃は茶色くなっていますが、早いと実は薄い緑色になっています。
青い実も、そのまま放置していけば茶色く変わっていき中身を取り出せるので、落ちているものは拾ってくると良いでしょう。
気を付けるのは、外皮の割れた物をうかつに手で持つとどんなに洗っても真っ黒になり3週間くらい落ちないので、胡桃拾いに行く場合は必ずゴム手袋を着用しましょう。
このくるみもちろん人間も食べられます。
和ぐるみは洋くるみよりも甘味があり確かにおいしいのですが、くるみ割り器で割れるような代物ではありませんので、以下の手順で中のナッツを取り出します。
駄目になっても良いようなフライパンで10~15分ほど乾煎りすると、継ぎ目がわずかに開きます。
開いた分部に工具や、ステンレス製の定規(など)を差し込みひねります。するとカチッと音がして完全に開きます。
こちらの画像は綺麗に取れましたが、胡桃の形状上、綺麗にとるのは難しく、大抵は真ん中で実が割れます。そのためアイスピックのようなものでほじって食べるのが一般的だそうです。
綺麗に割れた殻は、接着剤でつけて玩具として再利用しています。
玩具の与え方で注意したい事
ひとりで静かに遊んでいる時はご褒美を
先ほど一緒に遊べる玩具についてお話しましたが、愛鳥が一人で静かに遊んでいる時には、折りを見てほめてご褒美をあげる事が大切です。
行動修正トレーニングでは、悪い行動をさせないという概念より、良い行動をどう増やすか、という事を考えます。
つまり悪い行動をしたときに罰を与えるのではなく、良い行動をしたときにご褒美をあげるのです。
例えば、鳴き癖の強い子ほど、静かに一人で遊んでいる時には褒めてあげ、好物のご褒美を与えます。
呼び鳴きの理由のほとんどは、飼い主さんの注目を引こうとするものです。
なので、呼び鳴きの時には行かず、静かにしている時にこそご褒美を与え、呼ばなくても飼い主は見ている事、ご褒美までもらえる事を教えるのです。
そうすると、鳥さんはとても賢いので、呼んでも飼い主は来てくれない事、また、ほめられたりご褒美をもらうには静かにするのが一番と悟ってくれるようになります。
反対に行儀の悪い行動をしているときは、他の良い行動ができるように飼い主さんがプログラムを考えなければなりません。
物を取り上げない
鳥が興味を持っているものは、根付かせたくない行動以外は、なるべく取り上げないようにします。
例えば衣服のボタンは、鳥さんの嘴が届く丁度良い位置にあり、鳥さんにしてみれば取ってくださいと言わんばかりの好都合な物です。
折角遊ぼうとしているのに取りあげられたらたまったものではありません。それどころか、あなたを嫌な奴認定するかも知れません。
なので、遊ぶ際には予め古着にボタンを沢山つけておいて、齧られても良いようにしておきましょう。
プラスチック製の物は要注意
手作り玩具を与える前は、レゴを上げてみたのですが、簡単に砕いてしまい破片の切り端がとがっていて危ないと思いました。
プラスチック製のものでも柔らかい素材のものなら十分玩具になりますので素材を良く見て購入した方が良いでしょう。
今回はこれで終わります。こちらの記事もぜひ併せてお読みください。
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