鳥の換羽期(トヤ)について
私は現在、鷹のハリスホークとコンパニオンバードであるハルクインコンゴウインコと、ラブバードと言われるコザクラインコを飼っています。
彼らと暮らす中での日々の悩みや学びをこのブログに記しておりますが、今回は換羽期についての記事をまとめてみました。
換羽期は綺麗な羽根が生えるチャンス
猛禽類とインコ類では飼育環境が異なる為、受けるストレスの原因も大きく異なりますが、どちらの鳥の場合もストレスにさらされるとその影響は羽根に現れます。
この様な羽根は脆弱でありフライトに影響を与えるのは勿論、ケージ内で動き回っただけでも羽根が折れるなど、望ましい事ではありません。
ですが、適切に換羽期を過ごす事ができれば、次に生えてくる羽根は強く丈夫なものになります。
この羽根の生え変わりの時期を換羽期、又は鳥屋(トヤ)と言います。
ほとんどの鳥は毎年春先に羽根が抜けはじめ、晩秋にすべての羽根が生えそろいますが、種類によっては一年を通じて換羽するものもあるそうです。
換羽は新たな羽根が生える為の一年に一回のチャンスです。
強く美しい羽根が生えそろうように、飼育者(オーナー)は細心の注意が必要になります。
まずは、鳥類全般の管理に共通する点についてご紹介し、それからコンパニオンバードの調教の一環としての換羽期の過ごし方をご紹介ます。
一般的な換羽期の過ごし方
十分な栄養・適度な運動・清潔
換羽は体力が必要になる為、十分な栄養が必要です。
特に鷹の場合には換羽期は訓練を中止して換羽に集中させると言うくらい、この時期にはたっぷりの栄養を与えなければなりません。
何故ならこの時期の栄養失調・ストレスは、新たな羽根の形成に大きな影響を及ぼしてしまうからです(後述)。
十分な栄養とは
ペレットなどの人工物を食べるコンパニオンバードやラブバードは、換羽期用の物に変えたり、換羽期用のサプリメントを与えることをお勧めします。
インコなど緩慢な換羽の場合、過剰羽繕いなどの問題行動をする事があり、このような場合には習慣化する前に食事内容を改善した方が良いでしょう。
羽根の形成に良いのはタンパク質と言われていますので、タンパク質が多く含まれているのもを与えると良いでしょう。
種子類など、脂質の多いものは攻撃的になると言われていますので、与えすぎに注意し控えるようにします。
運動・清潔
羽根の成長は羽軸を流れる血液によって行われ、羽ばたく行為により血流が促進され成長が促されます。
例えば水浴びなどは、羽根を乾かす為の羽ばたき行為につながるので、回数を増やす事もお勧めです。
またコンパニオンバードなどは問題行動を起こしやすい生物ですが、こうした飼育の改善により問題行動が軽減されるとも言われています。
飼育下にある鳥の問題行動の原因は、飼育者の(未熟な)管理によるものがほとんどです。
そのため、問題行動がみられたら、まずは自分の飼育方法に問題があることを認識し、改善しなければなりません。
自己の羽毛破壊行為が見られたら
自己羽毛破壊行為は、過剰羽繕いや羽齧りの他、羽根を脚でしごくといった行動など様々です。
過剰羽繕いは習慣化すると毛引きに移行し、おハゲの原因になる問題行動で、最も注意が必要な行動とも言えます。
このおハゲは、3週間後に獣医師にかかった頃には自然に治っており、診断結果も毛引きではないだろうとの事で、安心しました。他の動画からも、幼鳥に見られる特徴の様です。
また、頻回に脚で羽根をしごく動作のあった部分では、羽根がちぎれています。こうした行動は、どのような時に見られるのかを観察し、原因を取り除かねばなりません(行動修正トレーニング)。
この子の場合、過度に接するとこの様な行動が見られたように思います。
現在この癖が完全に治ったわけではありませんが、だいぶ減り、換羽によって新しい羽根が生えた今は綺麗な羽根を維持できています。
羽根自体の栄養としては蛋白質を多く含有しているものが良く、行動修正については、脂質(ひまわりの種やシード)を少なくし、カルシウムとヨウ素を多く含んだものが良いとされています。
鳥によって換羽期間は異なる
鳥の換羽期は、春先から始まり秋頃に終わる事が多いようですが、厳密には通年のものや、年2回のものなど種類によって異なるようです。
ハリスホークでは、春先から抜けはじめ晩秋にかけて生えそろい、インコ類は、春先と秋口の年2回とも言われています。
実際のところ人間の飼育下にある鳥の場合は、照明時間の長さや室内の温度によって、かなり早く始まるようです。
私の飼育経験ではハリスホークは、暖房の効いた部屋では2月から始まりましたが、これはあまりにも早すぎたと反省をしました。
そのため翌年にはなるべく自然の時期に換羽を迎えられるように気を付け、真冬の暖房の温度設定を上げ過ぎないように控えたところ、4月末に始まり、6月現在の今は換羽真っただ中というところです。
一方、今年迎えたコンゴウインコ(1歳)では、5月に小さな羽根(体羽)が大量に抜け、その後に大きい羽根が何枚か抜け落ちました。
現在は一旦抜け羽根は落ち着いたようにも思います。
いずれにしても、出来る限り自然に従った時期での換羽を迎える事が鳥にとっては良い事と考えますので、照明時間や温度管理、可能なら湿度管理も重要な要素と言えそうです。
換羽の仕組みと羽根の構造
抜け羽根の順序
鳥は、換羽期に皮膚の下から新たな羽根が生えはじめ、古い羽根は押し出されて抜け落ちます。
通常体羽の換羽がかなり進んだ後に、風切り羽根と呼ばれる翼(最も外側)と尾羽が抜け落ちます。
抜け羽根の実際
この子(ハルクインコンゴウインコのサファイア♂)は私がお迎えする1歳までを、おそらくは狭いケージで飼われ、かつ雛時代を栄養失調で過ごした為、一部の骨や羽根の形成でダメージを受けていた子でした。
体羽(飾り羽)には艶がなく、外側の飾り羽根は全体的に黒く変色しているのがわかります。
また、羽根を広げると初列風切り羽根で欠損が見られます。
ハンガーマークのある羽根は脆弱な為、ケージの柵にぶつかるなどの外力が加わり続けると、その部分でちぎれてしまうのです。
ですが通常換羽を迎えると、羽根は綺麗に生え変わりますので、十分な栄養・清潔・運動を心がけて、適切な飼育環境を整えてあげましょう。
羽根のダメージに関する詳細についてはこちらの記事コンパニオンバードの問題~1羽根の異常と対策~をご覧ください。
生え変わりの筆毛
新しい羽根にはその根元に白い筒のようなものが付いていて、あたかも筆のように見える事から『筆毛』と言います。この筒状のものは羽繕いによって自然に剥がれ落ちます。
この筆毛の生えはじめはツンツンとした状態であるため、鳥にとってはいささかイライラさせられるようで、時に人間の手でほぐしてあげると良い関係を築く事ができるそうです。
ただし、なついていない鳥に対して手を出すと返り討ちに遭うこともありますので、ご注意を。
羽根には血管がある
羽根の中央には羽軸という太い組織があり、そこに血液が流れて栄養が運搬されます。
短い小さな羽根が生えはじめ、成長とともに大きな長い羽根へと変貌します。
十分な栄養を与えられた状態での新しい羽根は、古い羽根に比べると比べ物にならないほど色はとても鮮やかで、艶はもちろん、肌触りすら違います。
羽軸が折れたら
羽軸を流れる血管の分布は、完成した羽根では中央までのようで、先端まで血液が流れているわけではありません。
その為、羽軸の血管部で羽根が折れたり、怪我をすると傷口になりそこから感染症にかかるリスクが生じます。
自然に抜け落ちた羽根は、通常血液が付着することはありません。
しかし羽根の根本から抜けているのに、付け根部分に血液が付着しているような場合には、鳥自身が無理に抜いた可能性(毛引き)があり、早急な対処が必要になります。
抜け落ちた羽根は常に観察し、異常があれば自己判断は避け、速やかに獣医師に受診する必要があります。
毛引きが見られたら
毛引きの原因は多くがストレスと言われています。
毛引きは自分で無理に羽根を引き抜く行為の為、出血を伴う事も少なく、ストレス除去と同時に、皮膚や羽根のケアも重要になります。
ですが羽軸からの出血は根元であろうと、途中であろうと感染症にかかるリスクもあるので、毛引き行為が見られたらまずは自己判断を避け、必ず獣医師に診てもらうようにしましょう。
受診の必要性
お迎え検診は必ず受けるようにしましょう。
私は知人から良い医師がいると紹介され、検診をしていただき、栄養改善のアドバイスや行動コンサルタントの方もご紹介していただきました。
もし今愛鳥に関する悩みがあれば、まずは獣医師へ相談してみましょう。
クリッピングはするの?
鷹の据え回しをしていてよく聞かれるのですが、これについては鷹は、フライトをさせる事が目的なのでカットはしないのが通常です。
一方大型鳥で、特にペットのインコやオウムの場合には、飛んでいかないように、また室内で飛んで怪我をしないように、羽根を切りそろえる事があります。
この様な処置を、クリッピング(又はクリップ)と言いますが、大型鳥のお迎え時にはした方が良いと言われています。
クリッピングは、血管を避けた羽軸で、風切り羽根の数枚をカットします。
その為獣医師によって適切・清潔に施してもらう事をお勧めします。
ただし、クリッピングをしても、突然のもの音に驚いたりすると十数メートル飛んでしまう事があります。その為、油断せず、しっかりと飛翔管理しなければなりません。
換羽期に特に注意すること
換羽期のストレスは大敵
春から羽根が抜けはじめ、秋に生えそろう換羽ですが、この頃にストレスを受けると、そのダメージは羽根や性格の変貌として現れ、フライトに大きく影響をするのでいくつかの点で注意をしなければなりません。
ストレスハンガーとは
換羽期の過度な訓練や飼育上のストレスから羽根が一部薄くなったり、マークが現れます。これをストレスハンガー(マーク)と言います。
艶がなく、羽根のところどころは透けて向こう側が見えます。また、黒い線も入っていてとても劣悪な環境で過ごしていたことがうかがえます。
ストレスを与えない為にはまずは、体重制限・給餌制限はせず、栄養を整え、体重を増やします。
また放鳥時間を長くしたり回数を増やすなどし、可能な限り規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとれる環境に整えましょう。
暑い時期の尾羽落ちは要注意
尾羽は暑い時期に良く抜け落ちますが、尾羽根が沢山まとめて落ちるようなことがあれば、何らかの精神的ストレスやトラウマのような出来事があったかもしれません。
鳥は恐怖体験によっても自傷行為が見られるので、こうした行動を起こさせないように飼い主として最大限の努力が必要になります。
いつも思うのですが、鳥さんの行動修正は、飼育者の行動修正と言っても過言ではありません。
コンパニオンバードの羽毛破壊行為
毛引き、過剰羽繕い(本来は内側にある綿毛が表面化する)、羽齧りによる羽根の断裂は、換羽期の新しい羽根に期待をかけるしか方法はありません。
野生下では通常見られないこのような症状の原因は、人間の過干渉によるストレスと言ってほぼ間違いないので、愛鳥との関わり方を見直す必要があります。
そのうえで、血行を良くする為に羽ばたき行動を促し、水浴びを励行する事が重要になります。
水浴びは清潔を保つだけでなく、羽ばたき行動につながり、血行を改善し、羽根に色艶を取り戻させる効果が得られます。
2歳を過ぎても綺麗な羽根にならない
大型鳥では激しい遊びの中で羽根を傷つける事はよくあると言われています。
コンゴウインコやオウムなどは活発で、好奇心も旺盛ゆえに尾羽を曲げたり、汚したり、根本から完全に折れてしまうなんて事も珍しくはないそうです。
羽根が折れるとなると飼い主としては、毛引きや羽齧りがあるのではないかと、とても心配になりますが、活発に遊ぶのは幸せな鳥だからこそと言えます。
ただ、鳥も成長につれ行動に落ち着きが現れ、このような活動も2歳になるころにはひとりでに治まり、綺麗な羽根が完全に生えそろいます。
言い換えると、2歳以上になっても羽根に問題がある場合は、看過する事は出来ず、獣医師や行動コンサルタントなど専門の方に診てもらいましょう。
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