据え回しとは
据え回しとは、鷹が外の世界に慣れる為に行うものですが、この時鷹の全体を眺めつつ個体の性質を把握するように努めます。
基本メニューと概要
基本メニューの全体的な流れは、鷹を飛ばす5つの目標と基本メニューでもご紹介しています。
- メニュー1『据え』:(室内)据えが出来、グローブまでジャンプして餌を食べる事ができる
- メニュー2『据え回し』:(屋外)据え回しで餌を食べる事ができる
- メニュー3『スモールステップス』:短い距離で呼び戻しができる(屋外での短距離フライト)
- メニュー4『渡り(ひも付き)』:クリアンスの距離で呼び戻しができる(屋外での紐付きフライト)
- メニュー5『ルアー訓練』:絶対的回収手段として入れる
基本メニューでは各段階に目標があるので、一つ一つこなしてから次に行くようにしますが、室内訓練での『据え・ジャンプ』を適切に出来る事は、猛禽の習性を理解する事にもつながりますので、まずはしっかりと行えるようにしてから『据え回し』に移る事をお勧めします。
外の世界に慣れるとは
外の世界に慣れるとはただ騒音や人に慣れるというより、外で餌を食べる事ができるかどうかと言う事です。
据え回しは“この期間行う”と言うものではなく、信頼関係を築く上でも重要な日々の練習メニューになります。
まずはポイントを決めてその地点に来たら少量の口餌を与えるようにします。
※口餌とは、小指の先端程度に細かく切って与える餌の事。渡り(一定の距離の往復を繰り返す練習)では、この口餌で反応するようにします。
また、自動車や飛行機の騒音、人など、鷹が恐怖を感じる物に接近した時に、驚いて飛び立たないよう、使役者が鷹の注意をそらす為に、口餌を与えます。
歩行中すれ違う人や物がある時には、使役者は鷹の視界がそれらに行かないように、対象物へ背を向ける形で45°回転し、グローブに餌を乗せて食べさせるようにします。
慣れる迄は食べない事もありますので、根気よく続けます。
※据え回しには夜、朝、昼と段階がありますが、通常はショップで日中の明るさに慣れていると思いますので、ここでは詳細については割愛します。
据え回しは犬の散歩とは意味が違う
据え回しは犬の散歩とは意味合いが異なり、鷹にとってグローブの上が最も安全であるという事を教える為にも大切なフライトトトレーニングメニューです。
ここで、餌が食べられるようにならなければ呼び戻しで必ず悪い影響が出ます。
据え回しの姿勢チェック
グローブの上で安定した状態を保っている鷹は、使役者が歩行をしていも背筋が伸び、尾羽は閉じ、真っすぐ前方を見据えています。

閉じている尾羽
反対に、前傾姿勢で尾羽が開いている場合にはグローブ上が不安定なためにバランスをとっています。

広がった尾羽
また、キョロキョロと仕切りに見回しているのは、周辺を警戒している場合です。
完璧な姿勢をとれるようになるのはかなり難しいようです。
私の失敗
私が据え回しの重要性を知ったのは、訓練を重ねてから半年以上経過した時でした。
据え回しで餌を与えない
ある程度訓練紐を付けた状態で距離を飛べるようになったので、安心して購入元で行うフライト訓練に向かったその日、うちの鷹(ハリスホークの天雅君)は何度呼んでも、大きな餌を見せても、ぴょこんとも飛びませんでした。
初めて行く場所でもあったのである程度体重も落としたのですが、全く飛ぶことをせず、他の同い年のハリス達がフリーフライトで練習をしている中、私と天雅だけがそれを眺めていました。
可能な限り朝晩2回のフライト訓練を重ね、飛距離が伸びる度に喜んでいた日々が私の脳裏をよぎると、私は、この子をフリーにするなんて到底できないのではないかと、不安やら悲しみやらで涙が止まらず、ずっと木陰で泣いていました。
手に据えている天雅が、「クー、クー」と時折鳴いたり、私のグローブの上で片足立ちでリラックスしている無邪気な姿を見ていると、不便でならず(当時は真剣です、ハイ)、自分がフライト練習をしているのでなければ、この子もきっととっくにフリーになっていた筈、と思え一層涙が止まりませんでした。
本当にあの頃は絶望の淵にいました。
師匠に、普段の訓練ではある程度飛べている事、今回に備え体重も落としてきたこと、据え回しもほとんど毎回行ていることを伝えた時に、アドバイス頂いたのが、据え回しでは、ポイントを決めて餌を与えると良い、と言う事でした。
実は据え回しの際にはいつもフライト練習用に餌を持ち歩いていたのですが、歩きながら餌を与えるという事をしていませんでした。
確かに鷹にとって訓練は、餌を食べる為に行うもの以外の何物でもありませんが、餌を食べる事が出来ると言う事は、どのような状況でも使役者がいれば安心して食べられる、という信頼関係を表しているものでもあります。
そしてその第一段階が据え・据え回しなのです。
結局私は本来の『据え回し』からやり直しをする事になったのです。
初めのうちは、今まで通っていた場所でさえ歩みを止めても食べてはくれませんでしたが、続けていき徐々に慣れてくるとポイントやそれ以外でも餌を食べるようになりました。
当時を振り返ると
2025年12月現在、この時の状況(記事)を改めて振り返ると、初見の場所であるのに詰め(減量)が甘かったかもしれません。
クークー鳴くのは機嫌が良い時ですし、片足立ちはくつろいでいる場合ですので、餌に集中する必要がなかったのだと思います。つまり、知らない場所で餌を食べるほど、空腹ではなかったのだと思います。
また、そのあたりのことは改めて記事にしたいと思います。

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