体重と給餌の関係
空を自由に飛ぶ事の出来る鷹が、鷹匠の元に戻ってくる姿は本当に華麗で、ひとたび見たら多くの人が魅了されるのではないでしょうか。
あのように鷹を自在に使役する事ができるのは、毎日鷹に触れ、体重管理と給餌量は勿論、その日のコンディションによって訓練内容を調整し、鷹に体で覚えさせてているからです。
鷹が訓練下で飛べるようになるには体重コントロールが重要なポイントとなります。
その一方で、ただ体重を落とせば良い、と言うものではありません。
そこで、今回は、体重管理と給餌の関係についてご紹介します。
体重の考え方
鷹を飛ばして呼び戻す為には、それが可能な体重を維持する必要があります。
それがフライティングウェイトであり、ハンティングウェイトです。
フライティングウェイトとはフリーフライトが可能な体重であり、ハンティングウェイトとは、鷹狩が可能な体重を言います。
これらの体重を知る為にはまず、個々の全体重(フルウェイト)がどれくらいあるかを把握する必要があります。
お店で購入したその年は、販売元にフルウェイトや、フライティングウェイトを聞いてみると良いでしょう。
フルウェイトを知る
フルウェイトとは、餌を常に沢山食べていた状態でこれ以上太れない、と言う重さです。
鷹は1歳頃にはほぼ成鳥としての扱いになりますので、フルウェイトは毎年の換羽期に知る事が出来ます。
鷹の換羽期(初夏から8月末頃)の過ごし方は、強い羽根が生え変わるように無理な訓練は避け、たっぷりと餌を与えて換羽に集中させます。
この時の体重がフルウェイトになり、トヤ明けの体重コントロールをする為の基本体重になります。
成鳥のフルウェイトは雄では700g~900g位、雌では1100g~1400g近くあります。
鳥屋(トヤ)の過ごし方についてはこちらの記事をご参照ください。
フライティングウェイトを知る
後に詳しく記しますが、フライティングウェイト(フリーフライトが可能な体重)はこのフルウェイトを100%として割り出します。
ただ実際にトレーニングをしていくと年々わかりますが、体重だけでなく肉色の状態、その子の性格、訓練場所によっても餌の量を調整してフライトをしますので、数値のみにこだわらないようにします。
もしも迷ったら『高めの肉色』を意識して、急激な減量は避けましょう。
フライトが可能な体重とは
闇雲に減量を始める前に、まずフライトが可能な体重の設定は場所との関係がある事を知らねばなりません。
体重コントロールの3つの設定
鷹の体重管理にはミュウウェイト(詰めていない標準体重)、フライティングウェイト(飛ばせる体重)、ハンティングウェイト(狩りができる体重)という3つの設定があります。
これらの体重設定は、場所との関連で考えます。
- ミュウウェイト:オーナーの家の中、鷹部屋(ハウス)
- フライティングウェイト:普段の訓練場所・慣れている場所(ホーム)
- ハンティングウェイト:初めて行く場所・慣れていない場所(アウェイ)
ハリスは90%以上の体重でも可能
「空飛ぶ犬」と言われるほど人に慣れるハリスホークの場合は、体重が丸に近い状態でもフライトが可能と言われています。
もしも90%以下に体重を落とさなければコントロールが効かないのであれば、訓練自体を見直してみましょう。
一日の体重変動幅と給餌量の変動可能域
体重(減量)には、一日の許容変動幅があります。同様に、一日の給餌量の変動可能域もあります。
体重の変動許容幅
一日に変動しても良い体重の変動幅は、フル体重の1~2%と言われています。
これ以上の増減は急激と言え、ロストの原因となります。
鳥屋明けには、詰めを行い体重を落として行きますが、人の飼育下にあるハリスホークでは、詰める場合にも絶食はあまりせず、2~3週間かけて減量します。
天雅の場合
2025年の換羽期でフル体重はおよそ695g程度に落ち着きました。
695gの1~2%の体重の許容変動幅は6.95g~13.9gになります。
一日の必要な餌の量
一日に必要な給餌量があります。
- 体重100~200g(小型の鳥):18~25%
- 体重200~800g(雄のハリスホーク):11~19%
- 体重800~1200g(メスの場合):7~11%
天雅の場合
鳥屋明けの体重が695gです。ここから2~3週間かけて90%の体重である626gまで落とします。
一日の必要給餌量を11~12%と見ると、約76.45(=695×0.11)g~83.4(=695×0.12)gになります。
フライト時、天雅には、基本的にさばいたウズラ1羽(約70g)を与えていますが、微調整をする場合にはヒヨコ(1羽約40g)を併用します。
同じ量でも、ウズラとヒヨコでは脂肪質が異なり、ウズラの方が栄養、脂肪ともありますので、当然体重減少が変わります。
フライトに悪影響を及ぼす範囲
体重と健康への影響
フライトに悪影響を及ぼすのは、体重(肉色)が高すぎる場合、そして体重が低すぎる場合です。
- フルウェイト ロストの危険あり
- 85%以下 ロストの危険あり
- 80%以下 健康に影響が出る可能性
- 50%以下 餓死の危険
このようにフルウェイトの80%以下を切ると、ロスト以外の重篤な問題を生じる可能性があります。
体重とロストの関係
ロストはフライト中に呼ぼ戻しが出来ず、見失う事ですが、体重が重すぎ(肉色が高い)ても、軽すぎ(肉色が低い)ても起こります。
体重が高すぎる場合のロスト
この場合、高所に上がり留まっている可能性が高いので、付近の高い所を探してみてください。
特に電線や電柱は好んで留まる傾向があるようですので、見つけられたら、お腹が空いた頃に呼び戻す事も可能です。
体重が低すぎる場合のロスト
問題は体重が低すぎる場合のロストです。
体重が低い状態でロストをすると、見つける前に狩を始め、獲物を追いながらいなくなる為、回収が困難になります。
体重が高い場合も、見つける事が出来なければ、いずれ空腹の為に狩りを始めるので回収できなくなります。
もしも、ロストをしたらまずは飛び立った方角を確認して探しましょう。
鳩とは異なり、鷹に帰巣本能はない為、まずは探し出す事です。
その為にも、普段から装着しているジェスや鈴に不具合がないか、フライトコンディションはどうなのかを把握しておきましょう。
具体的な数値を割り出す
体重の値だけにこだわるのは危険と言われていますが、管理上、やはり毎日の計測は必要になりますので、具体的な数値は把握しておきましょう。
天雅のフルウェイト
フルウェイトは、換羽期のこれ以上食べられない、という体重になります。
鳥屋明けを迎えたところ、昨年よりも体重は10g~15g増えた695gです。
先の給餌量から天雅に必要な一日の餌の量は、11~12%と見ると、約76.45(=695×0.11)g~83.4(=695×0.12)gですから、ウズラ1羽と時々ヒヨコ1/2弱です。
ですが実際のフライト訓練では、およそ10%(ウズラなら1羽、ヒヨコなら2羽~3羽)でコントロールが効いています。
体重と給餌の早見表
体重管理と餌の必要給餌量はエクセルで早見表を作成しておくと便利です。

体重と給餌量のコントロールとロストの関係
今シーズンは、猛禽屋さん主催のフライトエスタへの出場と完走を目標にしてますので、前シーズンと異なる場所でのトレーニングを強化します。
また、経過や結果を投稿しますので、今後もよろしくお願い致します。
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