鷹匠とは
テレビなんかで鷹匠をみると、厳しい修行をしていると聞きますよね。僕の周りにそんな人はいないし、特別な学校や資格があるのでしょうか?
実は鷹匠になる為の特別な学校や資格はないんですよ。
通常『鷹狩に使役する鷹を飼育・訓練を担当する人』を鷹匠と言い、特定の資格がなければ鷹匠とは言えない、というものではなく、趣味の範囲から、職業に至るまで幅広く成り立ちます。
近年では清掃会社が害鳥駆除(追い払い)という部門を設け活躍しており、そのような人も勿論鷹匠と言われています。
伝統文化と鷹匠
鷹匠という分化は日本書記にも記されており、かなり古い時代から存在していた事がわかっています。
西暦355年に日本に伝えられ、朝廷を中心に王族貴族の間で栄えました。
ことに江戸時代には将軍や大名に愛され、その後も民間で鷹匠を生活の糧とする職業として成り立ちました。
鷹匠は野生の鷹を捕獲・調教し、ウサギや小動物を狩り(鷹狩り)、その毛皮を売って生活をしていたのです。
調教された鷹に生きた獲物を捕獲させるのですが、この時に鷹が獲物に鋭い爪を立てたり、食い始めてしまうと毛皮が高く売れなくなります。その為、獲物に傷をつけないで狩りをする鷹が良い鷹であると言われていました。
現代では鷹狩りにより小動物を狩って生活する事は困難であり、自給自足の農業を営みながら、伝統の鷹狩りを守り続けた鷹匠、武田宇市郎さん(平成4年死去、77歳)や、クマタカで猟をしている松原英俊さんなどが最後の名匠と言われています。
海外にも鷹匠がいる
鷹匠は日本特有の分化ではなく、海外にも存在し、今でも狩猟生活の手段として鷹が使役されています。
このような地域(諸外国)の中には、最近まで女性が鷹を持つことが許されなかった地方もありましたが、時代とともに女性が進出し分化は変えられてきました。
鷹匠って日本固有の分化ではなかったんですね。
現代の鷹匠
放鷹術は伝統文化として、また新たなエンターテインメントとして小さなお子さんから年配の方まで多くの人に愛されています。
また現代社会にあっては単に伝統文化を継承するというだけでなく、放鷹術・鷹狩りの技術を用いて今の時代にマッチした害鳥駆除という職業を見出しました。
野鳥を傷つける事なく追い払う事が出来るので、鳥獣保護法に抵触する事がありませんし、その様子は一種の芸術とも言えます。
またエンターテインメントとしての動物園でのバードショーでは、あらゆる猛禽類を使役するバードトレーナーに多くの人が魅了される事でしょう。
他にもペットショップによる放鷹(ほうよう)、鷹狩訓練の指導、鳥カフェなど、鷹や猛禽類に関わる仕事は豊富なものとなりました。
鷹匠になる為の条件とは
認定試験はあるの?
通常鷹匠とは『鷹狩(放鷹)に使役する鷹を飼育・訓練を担当する人』の事を言いますので、きちんと使役する事ができれば、認定試験に関わらず、鷹狩や放鷹を楽しんだり、仕事にする事ができます。
つまり、一般の人が鷹匠になるのに認定試験を受ける事が絶対条件ではない、という事です。
所で、『鷹匠になるには』と調べると、民間団体主催の認定試験を合格しなければならないというサイトがありますが、これは関係ないのでしょうか?
確かに民間団体主催の試験に合格しなければならないと書かれたものがありますが、これは「諏訪流古技保存司会」では、門下生の為の試験になります。
他にも「ワールドファルコナーズクラブ」「日本鷹匠協会」という団体による認定試験があり、それぞれの流儀に則って行われているようです。
詳細については直接お問い合わせいただいた方が良いでしょう。
諏訪流鷹匠の認定試験とは?
伝統の鷹匠技術を会得したい、伝統文化の継承者になりたい、試験に合格したという事実を得たい、と言う事であれば、流派に所属しそこで行われる認定試験に合格しなければなりません。
それが、諏訪流古技保存司会による門下生の為の認定試験で師範鷹匠を目指します。
受験者の段階に応じ、⑴鷹匠補認定試験、⑵鷹匠認定試験、⑶師範鷹匠認定試験があります。以下は簡単な説明になりますので、詳細については諏訪流放鷹術保存会をご参照ください。
鷹匠補認定試験
鷹匠補講習の内容としては「放鷹文化の歴史~諏訪流鷹匠と鷹の特徴~」 「伝統的鷹道具の機能と作成①」「伝統的鷹道具の機能と作成②」 「鷹の飼育と調教方法①」 「鷹の飼育と調教方法②」「調教の段階的理解と実践①」 「調教の段階的理解と実践②」 「狩のマナーと狩場の歩き方」の8つについて学び試験に合格をします。
鷹匠認定試験
受験資格は、鷹匠補認定試験に合格し、かつ、規定技を体得し3年以上自分の鷹を調教した門下生に限られています。
師範鷹匠認定試験
受験資格は、鷹匠認定試験を合格し、かつオオタカ及びハヤブサの調教法をマスターし、実猟において勢子(せご:狩猟の補佐役で獲物を狩猟者のいる方向へ追い立てる役割)を指揮し、雉を捕獲できる技術を有する者に限られます。
訓練は弟子にならなければ受けられない?
諏訪流放鷹術保存会では門下生にならなければなりません。
ですが、通常鷹を所有する為に必要な資格や行政許可などはないので、通常の訓練であれば、鷹匠に弟子入りする事が必要になるわけではありません。
では鷹匠になる為の訓練は、門下生にならない場合はどこで受けられるのでしょうか?
大抵は購入元で、無料で訓練を受けさせてくれます。
また、有料でしてくれるところもあります。
多くの場合、鷹を手に入れるには猛禽類専門店で購入されるかと思いますが、通常、購入者には無料で飼育指導やフライト訓練を行っています。
私も猛禽専門店の『鷹の庵~エキゾチックアニマル』というところで幼鳥を1羽購入し、無料で行われる訓練を受け、フリーフライトにしました。
この場合、無料で受けられる訓練はそこで購入した個体に限られます。
購入元と異なる個体であっても、有料にはなりますが、大抵は訓練を受けさせてくれるのでショップに相談してみると良いでしょう。
また、害鳥駆除を仕事にしている会社では毎日の訓練を行いますので、そうした会社に入社をする事も一つの手段です。
鷹の飼育は専用の鷹小屋がなければいけない?
必ずしも鷹小屋を用意しなければならないと言う事はありません。
私は2022年に雄の鷹(6か月のハリスホーク)を1羽購入し住宅街で、かつ部屋の中で現在も飼育しています。
ただ訓練上の管理として注意しなければならない事がいくつかあります。
稽留時の注意事項
鷹小屋だろうと、室内飼いだろうと、基本的には鷹はフライト以外はリーシュなどで止まり木に係留させておきます。
紐で稽留されて自由に動けないのはちょっとかわいそうな気がするのですが‥‥。
確かにかわいそうな気もしますね。でも実は稽留させておく事には訓練上の意味があるんですよ。
鳥類に限らず、普通動物には縄張りを持つ習性があります。
縄張りは、食事をしたり、生殖をおこなったり、仲間と毛繕いしあって信頼関係を育む、彼らにとってとても重要な生活の場です。そのため縄張りを侵害しようとする者に対しては容赦なく攻撃を仕掛けてくるのです。
つまり、稽留しないで自由にさせるとそこを縄張りと認識してしまうと言う事ですか?
その通りです。縄張り意識を持たせると攻撃的になる為、調教が入りにくくなるんですよ。
ペットで調教が上手く行かないのはそのせいなのかな?
しつけや、訓練が入らないのは一理あるかも知れませんね。まずは、鷹の場合の注意事項を見てみましょう。
一般に飼育下で縄張り意識を持ちやすいのは、2方向以上囲まれた場所や室内での放鳥です。
室内での放鳥が当然になると部屋全体を縄張りとみなし、飼育者さえ襲われる場合もあります。
その為、鷹であれば鷹小屋でもリーシュで止まり木に稽留させておかなければならないのです。
ただし、稽留させておくだけでは当然訓練が入るわけではありませんので、その分外での訓練を楽しませてあげるのです。
訓練で大事なのは常にメリハリを持たせる事です。普段紐で稽留させられ自由にならない分、外での訓練は、テンションが上がるように、餌を変えたり、ルアーを振ったりして興味を駆り立てるメニューをこなし、しっかり飛ばしてあげましょう。
鷹匠の仕事と収入
鷹匠としてだけの収入で生計を立てることは難しいと言われています。
実際に調教をしてみてわかるのですが、鷹の使役の絶対条件は必ず呼び戻しができる、と言う事にあり、その為には使役する鷹のお腹を満腹にさせるわけにはいきません。
なぜなら鷹は満腹になると、高所に留まり外界を警戒する事に集中し呼んでも帰ってこなくなるからです。
その為1羽ができる仕事(フライト)の時間は、使役する鷹の腹具合によって限られてしまうのです。
害鳥駆除
畑の種を食べてしまう野鳥や、集合住宅や工場、倉庫などで害鳥が巣を作ったりフンをするなど害鳥対策として追い払いを行う仕事です。
害鳥駆除の相場は、1クール=1回(1万円前後)/週で3か月~半年間で50万~120万円、アフターフォローは1回3万円前後です。
害鳥駆除のみで生計を立てるのであれば、少なくとも2羽以上の鷹の使役が必要になるでしょう。
うちの鷹の初めての害鳥駆除の報酬はジャガイモ
私(鷹)の初めての害鳥駆除の報酬は、近所の畑のご主人から頂いたジャガイモでした。
私はハリスホークの幼鳥(名前:天雅)を購入し、訓練の一環として毎日据え回しを行い、近所のあらゆるところを徘徊していました(笑)。
鷹は珍しいのですれ違う人、見知らぬ方々に声をかけられまして、今通っている畑のご主人もそのうちの一人でした。
2023年3月頃、畑を耕していらしたところに話しかけられ、色々お話しをさせていただき、野鳥に困っていると話されていました。
初対面にも関わらず、お野菜を持ってきな、と言って下さる気さくな方でしたので、害鳥駆除の練習としてこの畑を使用させていただき、天雅が無事に駆除に成功した暁には、お野菜を報酬としていただくというお約束を(厚かましくも)取り付ける事ができ、それから約1年、訓練に訓練を重ねていきました。
2024年2月にフリーフライトになってからは、しばらく訓練強化の為に山の方で練習をし、3月12日に畑のご主人に近況をお話しして害鳥駆除の為に畑で飛ばす事をお約束いただけました。
当日、ご主人にとってはひも付きの頃しか知らない天雅のフリーフライトでしたから、帰ってこないのではないかとそれはもう本当に心配したようです(笑)。
ただ、その成果は、天雅が畑の中に着地すると言った場面もあり、もはや天雅が害鳥ではないか、というレベルで、まだまだ修行をしなければならないようですね。
報酬はと言うと、ほぼ飛んでいなかったのに、沢山のお野菜を頂きました。
イベント出演
害鳥駆除もそうですが、日当は約1万円前後の様です。
イベントは、動物園でのバードショーや、販売店での出張鷹招体験・ミニバードショーになります。
鷹狩り
鷹狩りとは、飼いならした鷹を山野に放って行う狩猟の一種を言います。
初めて聞くと、鷹を狩るのかと思ってしまいますが、鷹を使役して行う狩りの事を言うのですね。
現代では鷹狩りという伝統文化を伝えることが役割に。 学校や博物館、美術館、公園といった施設からの実演会や講演会の依頼が多いようです。
野鳥捕獲・飼育の禁止について
現在の日本では、『鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)』により許可なく野鳥を捕獲・殺傷すること、飼うことは禁止されていますので、専門店で購入しなければなりません。
鷹匠の訓練
回収技術を磨く訓練
飼いやすいと言われるハリスホークでも、ロスト(見失う事)のリスクはあります。
鷹のフリーフライトの訓練の基本は、どんなに遠くに飛んでも餌を見せれば、若しくは餌の合図をすれば、すぐに戻ってくると言う事です。
鷹は満腹になると警戒心に注意が行き、呼んでも帰ってこなくなる恐れ(ロスト)があります。
そのため呼んでも必ず鷹匠の元に戻ってくるという回収技術を養う事が大事になります。
その為に行っている訓練が、据え回しとルアーキャッチですが、訓練には各段階があります。
鷹匠になる為にはどうしたら良いか、少しはお役に立てたでしょうか?
以下の記事では私の経験や失敗を通じて詳細にご紹介しておりますので、参考になれば幸いです。
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