鷹の初期トレーニング
鷹のフライトトレーニングで最も重要なのは餌への反応を良くすることです。
鷹を初めて飼う方、また今一度訓練を入れなおしたいと思う方は、是非、餌への反応を確かめる事から始めてみましょう。
ただ、最も重要なのは、毎日少しでも良いから、必ずフライト訓練を行う事です。そうする事でその個体の個性、クセが見えてくるようになります。
餌への反応とはどういう事か
餌への反応とは、食いつきが良い事で、餌を見せればすぐに飛んで来る事です。
特にフリーに出来た後もこの反応を見て、その日のフライトメニューを判断します。
餌への反応が良い
餌への反応では、以下の姿が見られれば良いと思っていいでしょう。
- 餌を見せて(呼ぶ合図)30秒(できれば20秒)以内に呼び戻せる
- 鷹自ら止まり木で呼ばれるのを待っている:止まり木に上げた時に使役者の方に体を向け飛んで来る準備をする(辺りをキョロキョロしない=警戒していない)
- 使役者が餌箱に手をやると目で追ってくる
- 餌鳴きがある
- ルアーの合図ですぐに反応する(飛んでくる)
- 体重はフルウェイトの90%以上でコントロールできる
餌への反応が悪い

2024年6月 紐付きのフライトでの様子。このような場合はロスト可能性大
- 餌を見せて(呼ぶ合図)呼び戻すのに30秒以上かかる
- 止まり木で周囲を警戒している:使役者に体を向けない=キョロキョロしている
- 高所でくつろいでいる(片足立ち・羽根干し)
- ルアーの合図をしても飛んでこない
- 体重をフルウェイトの90%以下にしなければコントロール出来ない
鷹のコンディションを管理する
餌への反応が悪ければ、当然フリーにする事は出来ません。
なので、少なくとも以下の点については、日ごろから管理をしておくと良いでしょう。
- フライト前の体重測定と肉色当て
- フンの性状と肉色の関係
- 体重減少率と一日の給餌の量
- 訓練時間・場所・訓練メニュー
これらは同時に意識して理解すべきであり、もし、体重だけに焦点を当ててフライトを始めれば、行き詰まりを感じる日が来るでしょう。
フライト前の体重測定と肉色当て
鷹が飛んでこない理由の一つに、餌を食べる必要がないという事があげられます。
所がこれは、単に空腹ではない、あるいは体重が重い、という事を意味するものではありません。
鷹が餌を食べないとき、鷹の注意は外界へ向いており周囲を警戒している状態にあります。
少々お腹が空いていても、飛んで敵に襲われるリスクが高ければ、鷹は飛んでは来ないのです。
言い換えると、餌への反応が良ければ良いほど、周囲を警戒する余裕がないほどに空腹な状態にあると言えます。
ならば飛ばしたい日に合わせて餌を控え、体重を減らせば反応が良くなるのではないか、とも思うのですが体重を減らし過ぎてもロストする危険がある為注意が必要です。
その為、体重の数値にのみ重点を置くのではなく、肉色当て、フンの性状から体調を推測できるようにします。
こちらの記事では体重早見表もご紹介しています。
肉色当てとは
猛禽類の胸の辺りにある竜骨突起という骨を触って、そこの肉付きがどのくらいなのかを確かめる事を言います。
肉色(しし)が高ければ太っている、低ければ痩せている、と言う意味になります。そのため体重管理は数値にのみに依存するのではなく、実際に猛禽類の身体に触れて確かめる事が重要になります。
『肉色当て(ししあて)』をして、その肉付きから、一日に減らせる餌の量や体重量を割り出します。
肉色当てで判断を迷う時には、「高めの肉色」が基本です。肉色が低すぎるとロストの危険が高くなるからです。
フンの性状と給餌の量
フンの性状を見る事で前日の餌の消化状況を判断します。そこからも餌の量や練習内容を変える必要が生じるからです。
フンの性状と鷹の反応
- 茶色のフン:消化管にはまだ前日の食物が残っている状態。餌への反応は悪く、高所で休憩しがち。ロストの可能性がある。
- 緑色のフン:消化し切った状態。前日の給餌から24時間以上経過するとみられる。反応がよくなる。
- 水分が多いフン:脂肪が代謝されている状態。反応が良くなる。
- 水分が少ないフン:脂肪燃焼が進み筋肉が消費し始めている状態。ロストの可能性が高い為、体重を少し上げる。
体重減少率と一日の給餌量
体重や餌を減量する場合にも、その個体に合わせた可能な範囲、というものがあります。
詳細はこちらの記事でご紹介していますので、是非ご参考ください。
4訓練時間・場所・訓練メニュー
餌への反応は、日中よりも明け方や夜間に、見慣れない景色よりも見慣れた場所で、高い位置よりも低い位置から呼び戻す事で良くなります。
飛ばす時間帯は適切か
1年目の訓練では、夜→朝方→昼間へ訓練をするのが良いと言われています。
日中は周囲への警戒が強い為、餌へ集中せず反応が悪いのです。
昼間飛ばなくても、夜間には飛ぶようになる為、据え回しを含め時間帯を少しづつずらし、慣らしてから日中へ移行します。
移行のタイミングは、何日間練習したら、ではなく、餌への反応が良くなりそれが定着してからです。
そして日中のトレーニングを開始する場合は、少し肉色・体重を下げておきます。
時間帯に慣れると、体重が重くても必ず飛べるようになりますので、信じて根気よく訓練しましょう。
訓練場所と鷹の状態は適切か
訓練場所は3つに区分されます。
特に基礎訓練では重い(丸に近い)体重で飛べるように(条件反射的に飛べるくらい)し、フライトする日が決まったら目標体重を設定し、それに合わせて徐々に餌と体重を絞っていきます。
※丸とは、フルウェイトの事。
基礎訓練向きの場所
毎日訓練できる場所。自宅付近など。フル体重でも餌への反応がよくなるように毎日訓練を入れ、ここで条件反射的に飛べるのがベストです。
私は仕事から帰った後(時間がない時)でも、自宅の駐車場(十数メートル)や近所の人気のない小さな公園で20分でも行っています。
フライト向き
開けた場所、高い木がある場所。ある程度体重コントロール(フライティングウェイト)をして呼び戻し訓練が出来る場所。
休日など時間をとれる日や、フライトシーズン(寒い時期)には、知り合いの畑や河川敷付近のグラウンドで行っています。
ハンティング向き
初めて行く場所。フライティングウェイトよりも軽いハンティングウェイトにコントロールした鷹狩りなどを行う場所。
遠出をして普段とは違う林などで行っています。こうした場所も回を重ねると慣れる為、フライティングウェイトでも飛べるようになります。
訓練メニューは適切か
基礎訓練は据え・据え回し、紐付きフライトでの呼び戻し(渡り・振りかえ)とルアー訓練になります。
初めてフライト訓練を入れいるのであれば、毎日訓練出来る場所で、暗い時間帯から、低い位置(使役者の目線よりもやや高いか、低い位置)で、近い距離から始めます。
片足でもグローブに乗せれば良いので、少しづつ距離を離します。
大切なのは、闇雲に体重を下げるのではなく、まずは、毎日の訓練場所で体重が重くても飛べるようにする事です。
メニューにメリハリはあるか
鷹の場合、犬や猫、コンパニオンバードとは違い、ほめる事で訓練が進む事はないと言われています。また、おもちゃを与える必要もありません。
一方で嫌な事をされると鷹もコンパニオンバードも警戒心を丸出しにして威嚇をしてきます。
その為鷹にとってフライトが楽しいと思えるような仕込みをしていかなければなりません。
その基本が飛べば必ず餌をもらえる、という事です。
トレーニングにメリハリをつける方法は、渡り(往復)では口餌を使用し、ルアーの時には大きな餌を与えるという、餌の使い分けです。

ヒヨコを1羽つけ、ご褒美にしテンションを上げさせる
ルアーは、鷹にとってはご褒美である為、渡りの後に行うのが効果的です。また必ず大きな餌(ヒヨコ1/2羽~1羽等)をつけ、最後まで食べさせてあげます。
ルアートレーニングは、多少お腹が一杯でもルアーを振れば必ず戻ってくる、という回収手段としての意義が大きい為、ハリスホークでもトレーニングは入れておくべきでしょう。
いくつもの要素を勘案、総合して使役者が調整する事で、鷹は存分にフライトを楽しむ事ができ、ロストを回避する事もできるのです。
10分以上間を空けて呼ぶ
フライト練習では、何度も名前を呼び続けたり、必要以上の時間をかけて餌を見せ続ける事は避けます。
呼んでも来ない場合には、使役者が一旦休憩をとり、鷹から見えないところに隠れスマホでも見ながら暇(10分くらい)をつぶしてみましょう。
しばらくすると、鷹の方もどうしたのかな?と気にするようになり、呼ぶと今度は一回で飛んで来るようになります。
これは、私が師匠から教わった手法です。テキストにはないことを知る為には、やはり人につくのが良いかもしれませんね。
フライトが上手く行かない場合
基本メニューのやり直しを検討
私自身、ハリスのトレーニングを開始してから1年半後にして(2月)、何とか、ようやくフリーにできましたが、3か月もするとすぐにどこか見えないところに行ってしまうようになりました。
10分もすると戻ってはくるのですが、これではロストの危険が高すぎて、1日のトレーニングを安心してできません。
そこで考えなければならなかったのは、練習の見直しです。
練習は基本的には毎日行う
フリーに出来た頃、仕事の兼ね合いもあり毎日練習をすることは難しい状態にありました。
ですが、反応がイマイチであった以上、私自身の行動を変えなければなりません。
そこで、仕事で遅くなっても必ず、餌やりはフライトをして与える事にしました。
夜間、家の前の駐車場で、紐をつけて餌やりの為のフライトを20分でも行うようにしました。※この駐車場は所有物の為、それが可能でした。
その年の換羽期(鳥屋)も練習を毎日行う事で、栄養状態を確保しつつ、体重がある程度重くても餌への反応を上げる事が出来ました。
鳥屋明け後の訓練をして、11月にはフリーにできました。
鳥屋期のフライトが上手く行かない
鷹などは、鳥屋(換羽)期に入ると、強い羽根に生え変わるように換羽に集中させるため、厳しい訓練は避けると言われています。
この時期は、餌を与えてこれ以上体重が増えない、という状態にして栄養を摂る事が重要になるからです。
また、この体重をフルウェイトとして、鳥屋が明けるころに体重調整をして、再び厳しい練習を再開します。
ただ、ハリスホークはもとより、人間に懐くとも言われており、鳥屋期についても、ほぼ丸(フルウェイト)の状態でもフライトは可能であり、体重を1割以上下げなければコントロールが効かないのであれば、練習が上手く行っていないかもしれません。
この場合、もう一度トレーニングの入れ方を見直す必要があります。
ただし、鳥屋期の栄養不良は羽根に顕著に現れます。脆弱な羽根はフライト中に何かにぶつかると折れる事もありますので、充分注意しながら鳥屋を過ごすようにしましょう。
鳥屋入り(6月)前、天雅♂のフライトウェイトは630~660gですが、練習1年目より反応はだいぶ良くなりました。
今年の鳥屋ではフル体重を700g以上にして、真夏の日中のフライトは避け、夜間のみのフライトはしていきたいと思っています。
※注:ショーに出るような場合はもっと体重を絞っていかなければならないと思いますが、私の場合はそこまで厳しくウェイトコントロールは考えず、むしろ毎日フライトをさせる事が良いように思いました。
餌への反応を見る事の重要性を、自分の経験を下に整理して記事にしましたがいかがでしたでしょうか?
私自身まだまだ未熟ものですが、最後までお付き合い下さり本当にありがとうございました。
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