フライトは環境も重要
飼育3年目を迎えたハリスホークの天雅君とフリーフライトを楽しみながら、失敗したことや学んだことをブログやYouTubeでご紹介しています。
今回はフライトトレーニングで見せる反応の違いを、外的要因、つまり環境的要因の側面からご紹介します。
基本のフライトトレーニング
ハリスホークをフリーフライトにするまでには、いくつかの段階がありますが、基本的な訓練については、以下の記事でご紹介してきました。

ただ、こちらの記事では訓練の手技的なものや、ハリスホークの内面的なものを主体にした記事になっています。
フライトトレーニングで重要な事
ハリスホークのフライトトレーニングは、ロストを避ける為の訓練であると言っても過言ではありません。
例え、フリーフライトをするつもりがなくても、鷹狩をする事を考えていなくても、紐付きトレーニング中であっても、装具品の破損により気づいたらロストをしていたという事は少なくないからです。
このような時に回収手段を持っていないとすると、手元に戻ってくる可能性がなくなります。
フライトトレーニングの考え方
ハリスホークは人に懐くため、本来フル体重に近い状態でもフライトは可能と言われています。
ですが、体重をフル体重の90%以下にしなければフライトコントロールが効かない、というのであれば訓練が上手く行っていないのかもしれません。
呼び戻しの合図から反応するまでの時間を見る
フライトで最も重要なのは、とにかく餌への反応を上げる事です。
呼んでから反応するまでに20秒以上かかるのであれば、フリーにすることは難しいかもしれません。

餌への反応とは
餌への反応とは、食いつきが良いかどうか、つまり、餌を見せたらすぐに飛んで来るかどうかという事ですが、他にも、食付くまでの時間や仕草、鳴き声、姿勢、目線などからその日の状態を判断することが出来ます。
餌への反応を上げる、そんなことはわかりきったことかもしれませんが、餌への反応は、ただ体重や肉色下げれば良くなるものではありません。
これは、体重を減らしてもなかなか反応しなかったり、最悪ロストする可能性すらあるからです。
餌を食べないのは警戒心の現れ
ハリスホークは常に飛ぶタイミングを見計らっています。
通常ハリスホークが餌を食べるのは、それが敵から襲われる危険性がない、と判断したときです。
逆に言えば、餌を食べないのは警戒心が強く働いている為に、危険を冒してまで飛んで食べようとはしないのです。
その為、警戒心よりも空腹が勝る状態に持っていく必要があります。
肉色当てを迷ったら「高めの肉色」
ハリスホークを餌に集中させるのであれば、警戒心を忘れる位に空腹な状況を作る必要があります。
所が、先ほども書きかましたが、体重(フル体重の85%以下)や肉色を下げすぎると反ってロストをさせる危険性が生じます。
その為、「肉色当てに迷ったら高めの肉色」と言われているのです。
※体重管理と給餌の関係は、こちらの記事で詳細にまとめていますので、参考になれば幸いです。鷹の体重管理と給餌の関係~フライトトレーニング~
こうしたことから、餌への反応を上げる為の条件は、体重や肉色当以外で考える必要があります。
餌への反応が大きく変わる環境要素
フライトトレーニングでは、どのような環境でも、またどのようなトレーニングメニューでも、慣れてから次のステップへ行くと格段に反応が良くなりますが、そのステップを誤ると、訓練が上手くいかなくなるかもしれません。
体重や肉色を適切に保っているのに餌への反応がイマイチ、という場合には、ステップの順序や訓練している環境をもう一度見直してみましょう。
差が明白に現れる5つの環境要素
餌への反応は、少なくとも以下の環境の差で明白にフライトに反映します。
- 初めて行く場所より慣れた場所の方が呼び戻せる
- 高い場所よりも低い場所の方が呼び戻せる
- 長い距離よりも短い距離の方が呼び戻せる
- 暑い時期より涼しい時期の方が呼び戻せる
- 明るい日中よりも暗い明け方や夕方の方が呼び戻せる
要素別に目標を設定
上記の違いを踏まえると各段階の目標は次のように設定されます。
- 初めて行く場所でも呼び戻すことが出来る
- 高い場所でも呼び戻す事ができる
- 長い距離でも呼び戻すことが出来る
- 暑い時期でも呼び戻す事ができる
- 明るい時間帯でも呼び戻す事ができる
体重コントロールと環境の関係
この目標を達成する為にも毎日訓練する事をお勧めしますが、以下の基準で進めていくと良いかと思います。
毎日訓練できる場所(鷹にとって慣れている場所)

20259月4日:鳥屋明け
このような場所は、毎日の訓練、特に鳥屋明けの肉色が高い状態のトレーニング開始に適しています。
9月ころ(鳥屋明け)は気温が高い時期でもあり、フル体重に近く、短い距離なので、昼夜問わず、ここでしっかり呼び戻すことが出来ればトレーニングは順調に進んでいると考えられます。
まずは朝方や夕方から初めて、涼しくなるころ(10月中旬)に向け、体重を下げていきましょう。
週1くらいで行く場所(あまり慣れていない場所)
ハリスにとってはいつもと違う場所になります。ところが、ここも慣れてくると格段に反応が上がるようになります。
まずは毎日の訓練場所よりも体重(肉色)を落とさなければなりません。
そして低い位置から呼び戻せるようにし、それが問題なくできるようになったら高い位置からの呼び戻しを行います。

2025年9月23日 低い位置からの呼び戻しは反応が良い
高い位置にする場合には、紐付きのトレーニングであるなら、安全確認を行い必ず自分で回収できる程度の高さから呼び戻します。
同じ場所でも低い位置と同じ体重では反応は上がりません。

20259月23日 高い位置で。低い位置で反応が良くても体重を下げていない為反応しない
また、高い位置へ行くと、気温の影響もうけ、温かい日には羽を広げて休むことがあります。

紐付きのフライト訓練 2024年6月気温が高い時は要注意
このような場所も何回か通う内に慣れた場所になりますので、反応は徐々に上がっていきます。
初めて行く場所や鷹狩
初めて行く場所では更に体重や肉色を下げます。

25年4月25日 初めて行く場所では必ず体重を下げる
初めて行く場所でも呼び戻せる事が出来たら、フライトトレーニングは順調に進んでいますので、いよいよフリーフライトが視野に入ってきます。
ここで、フリーにしても、また、例え姿が見えない場所に行ってしまったとしても必ず回収できるように、ルアートレーニングを入れておきましょう。
ルアーの反応が問題なければフリーにしますが、体重をコントロールできていも、何かの大きな音や、不意に現れる人影や動物に驚いてコントロールを失してしまうことがあります。
なので、必ず満腹になる前にトレーニングを終え、大きい予備の餌を持ち歩くようにします。
場所の選定
フリーにする以上は、どのような環境でも飛べるようにしなければなりませんので、普段から風景(雰囲気)の似た場所を3か所くらい用意してトレーニングを行うと良いと言われています。
例えば私の場合は、①家の近く(住宅地と駐車場) ②開けた場所・見通しのいい場所(公園やグラウンド) ③見通しの悪い場所(林や木が密集した場所) が日々のトレーニング場所です。
場所1:自宅周辺の住宅地や駐車場

仕事から帰ってきたときは遠くへ行く余力はないので、家の駐車場(10M未満の距離)で行っています。また家の近くであれば毎日の訓練が可能になるからです。
ここではフリーにはせず、必ず紐をつけて行動制限を行います。
私の経験1:小さな口餌でも必ず反応する
この場所は、天雅君にとっては慣れしたんで場所です。
とは言え、お迎え当初のはじめの頃は、大きな餌でも反応が悪くとても苦労したものでした。
ですが、3年目の今は、小さな口餌でもすぐに反応できるので、渡りの回数を増やすことに専念しています。
場所2:開けた場所・見通しのいい場所
休日の時間が取れる時には、車で行ったり、据え回しの為に徒歩で行ったりもします。
公園では、人がいない事を確認した上で、ガイドをつけてフライトトレーニングをしています。

2023年 ガイドを使用した訓練の様子:低い位置から
最初はベンチなどの低い位置から。

2025年10月:ガイドを使用して高い位置から
慣れてきたら滑り台の上から。

20251023グラウンドの片隅の低い木から
場所を変えてグラウンドの片隅の木から。
私の経験2:場所はちょこちょこ変えない
場所を変えての訓練でも毎日変えるのではなく、慣れたと思えるまではその場所での訓練を継続します。
慣れたと思う判断は、高所からの呼び戻しが出来た時です。
場所3:見通しの悪い場所(林や木が密集した場所)
木々のある場所は後追い訓練に最適です。

25年11月近所の桜の並木で。後追い訓練に最適
歩いても20分かかるかかからないかの場所(写真上)なので、据え回しや後追い訓練を始めた場合に使用しています。
また、後追いやフリーフライトの強化訓練の為には車で30分から1時間以上かけた場所に、2~3か月に1回行きます。

24年4月 車で30分かけていくときも、後追い訓練の為いつもと違う河川敷へ
訓練メニューはいつでも変更できるように
日々鷹のコンディションや気温を見て、訓練する場所を選んだり、訓練メニューを変えられるようにすると、フライトトレーニングは驚くほど進んでいきます。
今この記事を書いているのは11月ですが、この時期は鷹狩(11月中旬~2月中旬)が始まる時期でもあり、フライトの反応が最も良い時期でもあります。
観察するにもふさわしい時期だと思いますので、ぜひ、いつものフライトとは異なる視点で見てみてくださいね。

25年11月18日 フリーフライト
最後までありがとうございました。


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