据えとジャンプ
猛禽類をフリーフライトにさせる為にはこなすべき基本メニューがあり、各段階を踏んで次のステップに上ることが重要になります。
今回は、その初歩的段階である室内で行う訓練『据え・ジャンプ』についてご紹介します。
ここでしっかり基本を学んでおくと、後の紐付きフライトで苦労する事はないのでぜひ最後まで目を通していただければ幸いです。
最初の訓練は室内で据え
基本メニューを分けると以下のようになりますが、それぞれ室内で行うものと屋外で行うものがあります。
最初の訓練は室内になり、据え回しに行く前の段階の訓練です。
- メニュー1『据え』:(室内)据えができ、グローブまでジャンプして餌を食べる事ができる
- メニュー2『据え回し』:(屋外)据え回しで餌を食べる事ができる
- メニュー3『スモールステップス』:短い距離で呼び戻しができる(屋外での段階的フライト)
- メニュー4『渡り(ひも付き)』:クリアンスの距離で高所から呼び戻しができる(屋外での紐付きフライト、場所の選定が重要)
- メニュー5『ルアー訓練』:絶対的回収手段として入れる
基本メニューでは各段階に目標があるので、一つ一つこなしてから次に行くようにしますが、据え・据え回しを適切に出来る事は、猛禽の習性を理解する事にもつながりますので、まずはしっかりと行えるようにすることが重要です。
猛禽を購入する際には、必ずどの程度の調教が入っているか確認をし、既にフライト訓練を行っている場合には、『据え』『据え回し』『スモールステップス』へお進みください。
『据え』の目標と3つのステップ
今回ご紹介するのは、第一段階と言える室内訓練で、ここでの最終目標は、パーチからグローブにジャンプして餌を食べることが出来るようになることです。
このグローブで餌を食べる事ができる、という訓練には3つのステップがあります。
- 『据え』が出来る
- パーチからグローブに移る事ができる(50㎝位)
- パーチからリーシュの長さでグローブにジャンプできる(90㎝位)
据えが出来る
『据え』とは、グローブの上に鷹を乗せた状態を言います。

リラックスしている時に見られる片足立ちのポーズ
グローブは最も安全な場所でなければならない
鷹にグローブの上が最も安全な場所であることを教える重要な訓練になります。
何故これが重要なのかと言うと、これからは常にグローブに戻るようにしなければならず、グローブの事が嫌いになるようでは訓練は進まないからです。
フライトが上手く行かない理由の多くは、この時期の練習方法に問題があるとも言われており、信頼関係が上手く構築できていないかもしれません。
まずはここでは、鷹が安定した姿勢が保持できる事が重要になります。
また据えは、単に鷹をグローブの上に乗せておくことだけを言うのではなく、給餌の場として覚えてもらう重要な訓練メニューでもあるのです。
据え中の給餌方法
細かく切った物(口餌)をピンセットなどでひと口ずつグローブの上に置いて与えます。
※ここでは、決して大きな餌を与えず、細かく切った餌を与えます。これを怠ると、後のフライト練習で悪影響が出るからです(詳細は後ほど)。
餌を与える際には、「ハイ」「ホツ」などの言葉を一緒にかけて、出来るだけ一口ずつ与えるようにします。
据えの時間は、慣れるまでは数時間と言われていますので、ソファーに肘をかけておくと、長時間でも姿勢を保つ事ができます。
私は今でもフライトから帰った後には、1時間はソファーに腰を掛けて据え、この時に水分補給をさせています。
水分補給について
水は水桶に入れておくと良いと言われますが、警戒心の強い子は桶から水分補給をしたり水浴びをする事を拒みます。

フライト訓練後の水分補給は手酌で
水分は、餌からも摂取する事ができるのでさほどの心配はないと思いますが、お迎えから1週間以上経過しても摂っていないようであれば、水を入れたコップを手向け、コップで水が飲めるようにします。
警戒して口をつけないなら、使役者が一口飲んでみせます。するとそのコップからなら水を飲むようになります。
※外での練習を開始したら霧吹きや水筒を持参します。霧吹きで体に吹き付けたりコップに入れて水を飲んだりさせます。
据えによりグローブの上で餌を食べられるようになったら、今度は室内でグローブにジャンプして餌を食べられるようにします。
肉色当て・体重の記録
特に肉色当ては猛禽の減量を管理する上でも重要な作業になりますので、体重計測と併用して行うようにしまうす。
ここでは、肉色当ての感触(高・中・低)、体重の計測値、与える餌の量(g)と与えた餌の量(g)、フンの性状(茶・緑)まで記録しておくことをお勧めします。実際には記録事項はもっと多くなりますが、まずは、この項目は毎日観察が必要になります。
パーチからグローブに移る
室内で猛禽をパーチなどにのせてグローブにジャンプできるようにします。初めてのフライトトレーニングと言えるかもしれません。
初日に行う事
屋外でのフライト訓練に備え体重を把握します。まずは、前日から24時間以上開けてトレーニングを開始します。
また、必ず餌を与える時には声で合図して、反応したら餌を与え、成功して終わる事が重要です。
訓練前に体重計測と肉色当て
この頃の体重は通常詰め(減量)が行われていないので、個体のフル体重に近く、肉色当てでは高い状態になっていると思いますので、空腹時の体重を計測しておきましょう。
必ず掛け声をかける
餌を与える時は必ず掛け声(名前を呼ぶ、ハイと言う、笛を吹くなど)をかけ、餌の合図を覚えさせます。
『据え』で行った掛け声は、通常の呼び戻しで使用すると良いでしょう。
ここで重要なのは、呼び方を統一する事です。
はじめは餌を見せる時に掛けますが、何度も行っていくうちに掛け声をかければそれが餌であると認識し、掛け声により飛んで来るようになります。
また、練習メニューにより呼び方を変えます。例えば、ルアーでは笛を吹く、見えない場所からの呼び戻しでは餌合子を使用する、などです。
※道具の紹介は、こちらの記事をご参照ください。
訓練を2~3回でも成功させる
餌は一口(指の先くらいの小さい物)くらいとし、まずは、ジャンプできる距離でグローブに呼びます。初回では少し大きめの餌でも大丈夫です。
この時の距離は50㎝程度です。
はじめは片足乗せただけでも成功ですので、乗ったら必ず餌を与えるようにします。
また、1回でもジャンプで両足が乗れるなら順調と思って良いでしょう。
初回の訓練では2~3回で良いので、必ず成功したタイミングで終わるようにします。
翌日は餌の大きさを半分にして行い、その次は更に餌を小さくします。
2日目以降に意識する事
ハリスホークは、フル体重でも通常フライトが可能と言われる位、人に懐く生物です。
ここでは急激な減量は意識せず、まずはグローブで餌を食べる事を重点に置きます。特に、餌を見せてすぐ食べようとするかどうか、スムーズにグローブへの往復が出来るかを見ます。
屋外訓練ではフル体重より減量されていなければならない為、室内での訓練で徐々に与える餌を減らしていき、その時の反応の違いを覚えておきましょう。
大切なのは反応の速さ
重要なのはジャンプの距離ではなく、短い距離でも素早く餌に反応できる、という事です。
鷹にとって最も無防備となる体制は、餌を食べる際に頭を下に向ける姿勢であると言われています。
そのため鷹にとってのジャンプ(の距離)は、餌を食べる為に安全なのかを推し量る距離でもあります。
ここで使役者がジャンプの距離を伸ばす事に集中してしまうと、後々のフライトに影響が出ますので、まずは短い距離でも呼べばすぐに反応来る事が重要です。
スムーズに往復できているか
グローブへのジャンプに時間がかかる場合、距離を短くし、片足だけでも乗れるようにします。
グローブに乗りそうもなければ、その日の練習は中止します。
この場合、本来与えようとした餌の量を少し減らして『据え』に戻って給餌し、24時間後に同じメニューを行います。
これは、絶食を避ける事と、空腹状態を作り翌日の訓練に備える為(減量)です。
ですが、一日に減らして良い体重や減量して良い給餌量には限界がありますので、まずは通常よりも少し餌を減らしてみましょう。空腹になれば鷹は必ず餌を食べるようになります。
リーシュの長さ(約90㎝)をジャンプ
グローブとパーチの往復がスムーズにできるようになったら次の段階としてリーシュの長さに挑戦します。
リーシュとは、係留用の紐(ザイル)です。
室内での練習が順調に出来たら、外での訓練になります。
このあたりで、輸送箱や移動用のキャリーケージに慣れるようにします。


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