荒鳥となったコザクラインコ
コザクラインコは、柔らかな色合いとぷっくりとしたフォルムが特徴の小型のインコで、そこにいてくれるだけで私たちの心を癒してくれる近年人気のラブバードです。
今回手乗り崩れとなったコザクラインコを知人からお預かりしてリハビリをしましたので、その様子についてご紹介いたします。

荒鳥のリハビリ後:片足立ちはリラックスポーズの証
手乗り崩れ(荒鳥)になった経緯
まずはコザクラインコをご紹介します。
- 名前:よもぎ(お迎え後に私が命名)
- 性別:女子
- 年齢:不詳(飼育歴数年?)
- もともと手乗りインコ
生活背景
このコザクラインコは多頭飼いされていた子の1羽で、沢山のケージが並ぶ鳥専用の小屋の中で、長年1羽飼いで過ごしていました。
飼育はもっぱら餌と水やりだけで、他の子たちも含めケージのお掃除も適切にされているものではありませんでした。
最近になってつがいにしようとしたところ、相方とうまく行かず喧嘩になり、結局つがいにもできなかったそうです。
手にも乗らず、繁殖させる事もできない、このような鳥がたどる末路はたらいまわしになるか、保護施設で暮らす事になります。
飼育放棄された鳥のリハビリ
実はインコやオウムは年齢にほぼ関係なく、リハビリする事ができると言われています。
また鳥のリハビリで最も適しているのは、虐待ではなく、無視し続けられた鳥、飼育放棄された鳥なのです。
今回お預かりしたコザクラインコも飼い主に飼育放棄に近い状態にあった鳥で、噛みつく事により手放される状況にある子でした。
このような鳥は問題行動によって、最初の家あるいは2番目の家から追い出された過去を持つ者がほとんどです。
ですが、若い鳥で、差し餌育ちの鳥はリハビリをする事によってコンパニオンバードとして素晴らしい鳥に仕立てられる可能性があるのも事実です。
一般に鳥の調教は、小型鳥では1歳以内、中型なら2歳以内、大型なら3歳~5歳以内までには入れると良い(入り易い)と言われています。
リハビリも若ければ若いほど良いとされ、上記の年齢であるなら高い確率で問題行動の改善が期待されます。
ですが、新たな環境に迎え入れられただけでも大きな変化が生じ、180度行動は好転しますので、あらゆる手を尽くしてここが最も幸せなところである事を教えていくのが、最善策になるでしょう。
リハビリと基本トレーニング
リハビリと言っても、手乗り訓練は、基本のトレーニングと同じになります。
基本訓練:手から餌を食べる事ができる
手乗り訓練の基本は、手から餌を食べる事ができるようになることです。
鳥さんが餌を食べたいという欲求を利用して行いますので、トレーニングは必ず空腹時に行うようにします。
インコのように、生態系では被捕食者にあるような鳥さんは、餌を食べる時が最も無防備な状態になる為、空腹でなければ危険をおかして飛ぶ事はない為です。
基本1:体重測定
空腹の判断の指標の一つに体重測定があります。
まずは鳥さんのフルウェイトを計り、それより10%程度下げた体重で訓練を行います。

フルウェイトは、これ以上食べられない、という状態で過ごしていた時の体重です。
体重の落とし方で注意が必要なのは、20%以上下げるのは好ましくなく、25%以上落とすと生命に危険が及ぶ可能性があると言う事です。
基本2:指先の餌を食べてから手のひらの餌へ
トレーニングが全く入っていない雛あるいは成鳥では、手への恐怖心がある為、まずはケージの中で、指先に餌をつけて少しづつ与えるようにします。
この時鳥さんと指の距離は、鳥さんが足をかけなくても届く位置にします。
指先の餌を見てすぐに反応してついばむようになれば、次は手のひらに餌を乗せ、嘴が届く位置に手の平を差し出しこれを食べれば次の段階に行きます。
基本3:徐々に嘴と餌の位置を離す
反応が良ければ、徐々に鳥と手の位置を離し、鳥が足をかけなければ届かない位置に手をおくようにします。
鳥さんは片足づつ足をかけますので、最初は片足だけでもかけてくれたら成功です。
この時この手が安全かどうか確認しながら恐る恐る、それでも餌食べたさに乗っているので、焦らずにじっとしてあげ、まずは安全なんだと言う事を覚えてもらいましょう。
しばらく繰り返すと、片足ずつ両足を乗せるので、しっかり両足を乗せたら手をゆらさないように安定した状態で食べられるようにします。
状態が安定したらケージの外に出してみましょう。
ただし、フライトに慣れていない子の場合には、いきなり飛び立ち、部屋の壁に激突する恐れもあるので、注意が必要です。
また、高い所に入る可能性がある場合の想定もして、無理のない程度に行いましょう。
行動修正トレーニング
手乗りトレーニングを妨げる問題行動があれば、行動修正トレーニングをします。
問題行動:1噛みつきが癖がある場合
今回のコザクラインコのヨモギちゃんのように、ケージの中に手を入れると噛みつく場合には、まずは縄張り意識を解くようにします。
インコ類に限らず動物は縄張りを持ちますので、人の飼育下でもケージや特定の小屋を自身のお城と考え、侵入を許さない事があります。
その為、他の部屋にケージを移すだけでも効果的にトレーニングができます。
訓練1:トレーニングの時間を決める
基本的にはインコ類は規則正しい生活と、12時間以上の睡眠がとれるように配慮します。
また、トレーニングは、朝夕2回が望ましいとも言われています。
1回3分でも構わないので、1日2回を目指し、無理であれば1日1回は行いましょう。
かける時間は3分でも、1時間でも構いませんが、トレーニングが入る為には24時間放鳥をさせるのではなく、ケージで管理をした方が良いと言われています。
訓練2:ケージの外側から指先で餌を与える
小鳥でも、手袋をつけて手を強引に中に入れると、返って興奮させるので、時間をかけてゆっくり慣らすつもりで行い、むやみに手を入れるのはやめましょう。
それよりも、空腹時に訓練を行う、決まった時間に行う事が大切です。
ケージの外に出す事ができず、体重測定ができない鳥さんの場合には、日々の餌やりは1日1回にし、餌やりの前に訓練を行います。
指先に餌をつけてケージの外側から指を柵に当てます。餌を食べられれば、これをしばらく繰り返します。
初めは強く噛みついてくるかもしれませんが、徐々に餌のみを食べるようになります。
訓練3:縄張り意識を持たせない
噛み癖のある状態で、ケージの外には出せない場合、ケージごと移動して訓練を行います。
先ほど、訓練をするにはケージで管理をした方が良いと言いました。
そもそも噛みついてくる理由は、自分の縄張りであるケージの中に侵入してきた手に対する攻撃の場合も少なくありません。
その為、ケージの置いてある部屋でのトレーニングは好ましくないのです。
そこで、トレーニングを行う際にはケージの見えない場所、別の部屋で行います。可能な限り場所を変え、キッチン、お風呂場、洗面所、廊下など様々な場所で行いましょう。

一部屋を自由に過ごさせるとそこを縄張りとみなし、トレーニングが入らないばかりか、部屋に入るものを敵視して威嚇したり、襲ってくる事さえあります。
訓練4:指をケージの中に入れてみる
ゆび先の餌を水入れや餌入れの小窓から指を1本入れてみます。この時強く噛みつくかもしれませんが、可能であれば反応せずに指は入れたままにします。
鳥さんが飼い主に噛みつくもう一つの大きな理由は、構ってほしいがためのものです。
噛み癖が付くのは、噛まれた時に飼い主や家族が笑ったり、周りの人が「あらあら」などど反応した事で、鳥さんは喜んでもらえたと思い、また飼い主を喜ばせようとして噛みつき、これがエスカレートしてしまうからです。
噛まれても声を上げたり、指を引っ込めるといった行動はせず、無反応でやり過ごします。
これを繰り返しながら、トレーニングを続け噛みつきが弱くなってきた場合、鳥さんは、ただ構ってほしかっただけの可能性があります。
この場合、指をしばらく入れておくと指の下をくぐったり、甘噛みをしてきたり、指にまつわりつくようになります。
こうした行動がある場合には、指先で頭や首、翼をなでてあげましょう。
4~5日そうして過ごしたら、いよいよ指に乗るステップへ移ります。
訓練4:指へ乗るステップアップ練習
ケージの大きい入り口から手を入れ、人差し指に乗るように差し出します。
この頃にはもう噛みつきが甘噛み程度に改善されていると思いますので、指に乗るようになったら、思い切り可愛がってあげましょう。
元々手乗りだった子の場合、ケージの外に出してもすんなりと指に乗ります。
待ってましたと言わんばかりに飼い主に甘えてくると思いますので、頭、頸、背中、お腹などを存分に撫でてみて下さい。
訓練5:思い切り甘えさせてあげる
ラブバードほど、人間に可愛がられて暮らす事が幸せな鳥はいないでしょう。
これまで飼育放棄や構ってもらえなかった寂しい過去を持つ鳥さんの場合、それを埋め合わせてあげられるほどの愛情を注いでいくことが望ましいのです。
ただし、単なる甘やかしをしただけでは社会性を育む事は出来ません。
大切なのは、社会性を身に着けさせる為のしつけや訓練を、鳥さんが楽しみながら行えるようなプログラムを作ってあげる事なのです。
リハビリを終えての変化
私の手の上でリラックスポーズをとるようにまでなったコザクラインコのよもぎちゃんですが、お預かり当初は、朝5時になると2時間でも3時間でもずっと鳴いていました。

鳴き声は意外にも大きいです。特に甲高い声の為響きます。
コンパニオンバードのハルクインコンゴウインコとの飼育と並行して、ラブバーバードのリハビリを手探りでしていたのですが、当初朝の呼び鳴きは、コザクラインコの習性なのかと思っていたほど、私は無知でした。
ですが、今は朝夕の30分の放鳥、呼び戻しトレーニングをメインに、肩に乗せたり、指に止まらせ存分に愛情を注いだ結果、朝の呼び鳴きがいつの間にかおさまっていたのです。
鳥さんが鳴いている時、それは確かに意味があって鳴いているのです。そして多くは飼い主さんに構って欲しいという意思表示です。
その思いを汲んであげるとこんなにも素晴らしい鳥へと変貌するのかと、感心させられますし、慈しみの心が日々増して行きます。
愛鳥の事で悩んでいる方がいらして、この記事が少しでもお役に立てるなら幸いです。

手乗りの崩れだったコザクラインコが 人の手から手へ。


コメント