ハリスホークの換羽期の過ごし方
飼育3年目を迎えたハリスホークの天雅君、現在3歳で3回目の換羽を迎えました。
今回は、換羽と、この時期の過ごし方、また天雅君の鳥屋(トヤ)についてご紹介いたします。
換羽期とは
鳥も犬と同じように、羽根が生え変わる時期があります。
一般には、春先~晩春に羽根が抜けると換羽の始まりです。これを鳥屋(トヤ)入りといい、生え変わりが終わる9月頃を鳥屋明けと言います。
鳥屋入り・鳥屋明け
ハリスホークはフライト時よりも、雄では150g以上、雌では200g以上体重が増えると換羽が始まると言われています。
ただ室内飼育の場合には、温度管理や照明により換羽は早く起こったり、緩慢になるなど自然界とは異なる事があります。
天雅の鳥屋入り・鳥屋明け
実際のところ、天雅は、体重を増やす事で換羽が始まると思った事はなく、6月頃に抜け羽根がみられる事から換羽が始まったんだなと、認識しています。
7月現在、換羽の真っ只中にあり、この頃は特に小さい羽根も含め羽根がよく部屋の中に落ちていました。

7/6尾羽:新しい羽根が生えると古い羽根が落ちます
※実は換羽が始まったと認識した頃の、部屋に散らばる羽根の画像を撮っていなかったので、来年は是非、そうした画像を撮りたいと思います。
所が8月に入ると唐突に抜け羽根が減りました。
8月下旬にはトヤ明けを迎えるので、訓練に備えた体つくりの準備をします。
ただ、羽根が生えそろうまでは急激に体重を減らしたりせず、このまま体重を維持しつつ、訓練開始時期の体重を見据えていきます。
換羽は最も重要な時期
飼育下にある鷹にとっての換羽は、1年を通じて最も重要な時期でもあります。
何故なら、充分な給餌で体重をマックスまで増やし、ストレスを与えない事で換羽に集中させ、新たに生える羽根が強いものになるようにするためです。
特に体重をマックスまで増やすのは、その状態の体重を100%として、鳥屋明けの訓練開始時の体重を決める重要な作業の一つになります。
換羽期の訓練
換羽期には換羽に集中させるため、厳しい訓練は避けますが、訓練そのものは行って問題はありません。
鷹のハリスホークと言う種類は、鷹の中でも珍しく仲間で狩りを行う為、飼い主であるオーナーを仲間と認識します。
ゆえに、「空飛ぶ犬」と呼ばれるほどに人に懐くと言われています。
ですが、それもまた信頼の証なので、毎日わずかでも訓練を入れる事で、絆を深める事が出来るのです。
ハリスは通年フライト出来る
ハリスホークはその性質から人に懐く為、訓練は愛情でコントロールすることができる、とも言われています。
その為、特に厳しい訓練を入れる必要がないのであれば(愛玩としての飼育で満足ならば)体重を維持しつつ行います。
換羽の為には常に良い羽根が生えるように、肉を上げておく必要がありますが、ハリスホークは基本的には体重が丸の状態に近くても、コントロールが効くのです。
訓練が上手く行っていない?
ハリスホークの肉を一分(1割)以上下げなければコントロールが効かない、というのであれば、訓練が上手く行っていない可能性があります。
例えば、訓練がしっかり入っているハリスの丸の状態の体重が700gなら、693g(九分九厘)でもコントロールが効くそうです。
ですが、630g(九分)以下に下げなければコントロールができないのであれば訓練の見直しを検討してみても良いでしょう。
この場合には換羽と言えども完全に訓練を中止せず、基礎訓練を毎日行いましょう。
天雅の換羽期の訓練
天雅もまた、換羽期だからと全ての訓練を中止する事はしませんでした。
ただ、常に満腹状態にしているため、餌を見せても反応は悪く、高い位置からの呼び戻しはほぼ不可能です。
なので、低い位置から呼び戻したり(ジャンプアップ)、あとはなるべく、ルアーを入れるようにしました。
天雅の訓練見直し
今期の換羽を迎える前(昨年の10月以降)は、訓練の見直しを行いました。
2024年は、換羽だからとあまり訓練せずにいたのですが、その後、コントロールが悪かったので、10月以降、毎日必ずトレーニングをするようにしたのです。
メニューは、自宅の駐車場(十数メートル)での渡り、ルアー訓練、据え回しの強化です。
体重管理は場所により、コントロールが必要です。
- 基礎訓練向き:重い体重でも飛べる場所(自宅付近・駐車場など十数メートル/毎日のトレーニング)
- フライト訓練:フライトが可能な体重。鷹を飛ばして呼び戻せる場所(フライティングウェイト/距離を飛ばす事が出来る開けた場所/2~3か所用意)
- 鷹狩り:通所よりも軽い体重。鷹狩りなどの場所(ハンティングウェイト)
この内、1を毎日行うと驚くほど、フライト訓練での反応が良くなります。
私自身は、天雅の体重をマックスから90%以下にしたことはなく、概ね93%くらいでフライト訓練を行っていました。
ただ、昨年のフライトで普段と違う場所にフライト訓練に行ったときは、反応が悪かったという経験がありますので、今年はそのような場所に行く時は、88~90%にして、普段とは違う場所での呼び戻しを行い、反応の違いを観察したいと思っています。
体重は下げれば良いものではない
反応が悪いからと、体重だけを減らす事は危険なようです。
特に、注意したいのはインプリント個体(親鳥ではなく人間の挿し餌で育った個体)は、体重を80%以下にしてはいけないと言う事です。
なので、反応が悪くても闇雲に体重を下げるのではなく、訓練の見直しをしてみてください。
なお、健康被害が出るのは85%以下とも言われいていますので、迷ったら高めの肉色が基本になります。
換羽期の鷹の状態
体重管理と肉色当て
鷹の訓練は空腹を利用して行われる為、換羽期には厳しい食事制限や訓練は行わず、餌を十分に与えてこれ以上は食べられない、という重さまで体重を増やします。
肉色を見る・肉色当て
肉色(しし)とは、鷹の竜骨(胸の中央にある骨)の両側に沿ってついている肉の状態の事を言います。
体重は数値にのみこだわるべきでなく、重要なのは肉色当てです。
換羽時の肉色とフライト時の肉色を把握しておきましょう。
肉色当ての仕方
肉色当は通常餌を与える前に行い、親指と人差し指でつまんで上から下(又は下から上)に撫でおろします。
竜骨にたっぷりと肉がのっている状態を『肉色が高い』(図右端)、ほとんど乗っていない状態を『肉色が低い』(図左端)と言います。

左から肉が低く、右へ行くほど高い。丁度いいのは左から2番目か、1番と2番の間位
肉色と体重の関係
- 十分の肉色(丸=100%):最高体重の事で、これ以上食べられないという状態。換羽期はこの状態にし、トヤ明けのフライティングウェイトを割り出します。
- 八分の肉色(常肉色=80%):通常の体重でフライトができる状態。※85%以下ではロストする可能性があるので要注意。
- 五分五里の肉色(=55%):最低体重で、命を保つ事ができる体重です。
- 三分の肉色(=30%):餓死寸前です。
「詰めが効いている」とは、餌を与えず体重をかなり落とした状態を言います。
ですが飼育下のハリスホークではで五・六分の肉色はしません。これは、野生の鷹(アガケ)を人間の調教下に初めて置く場合にします。
体重55%以下では死に至る可能性があり、85%以下からはロストの危険性がり、80%以下では健康上の問題が生じる可能性があると言われています。
肉色当てはロスト防止の為にも毎日確認を
肉色は高すぎても低すぎてもロストにつながるので毎日触れて、充分感触を確かめておきましょう。
この肉色当は、体重計測よりも重要な作業と言われていますので、体重のみの数値だけで鷹の状態を判断しないように気を付けましょう。
フライティングウェイト
天雅君の場合のフライティングウェイトを割り出してみましょう。
体重の割り出しと早見表作成
今年の最高体重は690~700gです。フライトコンディションを85%~90%以上と考えて割り出してみます。
15%落とした体重:690g~700gー(69g~70g×1.5)=586.5g~595gです。
10%落とした体重:690g~700gー(69g~70g×1.0)=621g~630g
体重管理の早見表
早見表の見方については下記の記事をご参照ください。

体重と給餌量のコントロールは早見表を作成
昨年の体重とフライトの実際
昨年の鳥屋では、体重が約680~685gまで増えましたが、今思うと少なかったような気がします。
餌はほぼ毎日ウズラを1羽与えていて、問題なく完食していたので、それで良いと思っていたのですが、足りなかったように思いました。
ただ、サプリメントを使用し、栄養状態としても、元々肉色を高めで飛ばしていたので、羽根に異常が現れる事もフライトに影響する事もありませんでした。
鳥屋が明け、体重680gで10~15%の減量なら612g~578gでのフライトコンディションになりますが、実は天雅君、630g以下にしたことはありません。
フライトを趣味として楽しむ分には、戻りが多少悪くても構わないと思いますが、私はいずれはバードショーをしたいと思っているので、
体重管理は必須であるが、数値にこだわらない
大切なのは、体重の数値ではなく、筋肉の付き方を見る事です。体重を85%と考えても、脂肪の多い個体と筋肉の多い個体では、フライトが全く異なる為、餌への反応にも違いで出るのです。
後ほど詳しくご説明しますが、ハリスホークでは九分の肉色でもフライトに支障はないと言われています。
鳥屋明け(9月頃)には訓練を再開できるように8月頃から体重コントロールをしていきます。
給餌の仕方
訓練を完全に中止する場合、気を付けなければならないのは禽舎での過ごし方、特に餌やりです。
鷹は2方向以上囲まれた場所で餌を与えると、縄張り意識を持つようになると言われています。
その為、訓練中止により餌を禽舎に投げ込むだけのような場合には、鳥屋明けには攻撃的になる事もあります。
※生物に共通して言える事ですが、縄張り意識を持たせると調教が入りにくくなります。
換羽期の栄養
この時期に厳しい訓練の継続や栄養をとれなかったとすると、新たな羽根に悪影響が出ます。
換羽期の栄養失調
鳥類では、換羽期に厳しい訓練をしたり、餌を十分もらえなかったなど強いストレスにさらされた場合、ストレスハンガーマークが現れます。

春の換羽(コンゴウインコ):ストレスハンガーのある羽根は折れやすい
斜めに腺が入った個所(上図)で、向こう側が好けて見えます。このような部分は非常に脆弱で、フライト時に何かで羽根がぶつかった時に、その部分から折れてしまうのです(下図)。
他にも変色した入り羽根に悪影響が出ます。

換羽により脱落した大型インコの羽根:ハンガーマークの部分で欠損しているのがわかります
羽根がそろわないと飛翔に影響が出ます。
鷹の栄養・サプリメント
猛禽類の餌は、一般的にはヒヨコかウズラになるかと思います。
私は、肉色と体重を計測しつつ、餌の量を調整しながらサプリを毎日与えています。
羽根の名称と生え変わる順番
現在は多くの動物で栄養食が整っています。
鷹にもサプリメントがそれぞれの時期に用意されていますのでそうしたものを併用しながら換羽期の餌やりを行うと良いでしょう。
羽根の名称
羽根の名称は、体羽・雨覆・風切羽根があります。
体羽・雨覆の換羽は、巣立ち後7~10か月で活発になり頭部から首、尾部へ進み、一年で完結するそうですが、毎年抜け替わらない羽根もあるそうです。

生え変わりの順番
風切羽根もまた、換羽は毎年行われますが、全てが同時に起こるのではないようです。
その為、3年目くらいまでは幼鳥時の羽根が保持されています。
風切羽根が抜け替わる順番
風切羽根が生え変わる順番だけ見てみましょう(参考:猛禽類学P43)
初列風切羽根は毎年換羽するわけではないのですが、P1だけは常に毎年生え変わります。
順番は、一枚ずつ抜けると言う事ではなく、ある部分(2~3か所)で同時に起こります。

風切羽根の換羽
換羽1年目
初列風切羽根:P1~P6が生え変わります。
次列風切羽根:S1・2・3 S5・S6・S11~16が生え変わります。
その為、幼鳥の羽根がP7~10・S3・S4・S7~10で保持されます。
換羽2年目
初列風切羽根:換羽では、P1~3・P7~9が変わりますので、P10 が幼鳥の羽根のままです。
換羽3年目
初列風切羽根:P6・7・10 P1・2
※参考文献を読んでみても不明な点がありましたので、この投稿は専門家でない事、知識としては不十分な物であることをお許しくださいませ。
抜けた羽根の保存
抜けた羽根を捨てるのは忍びないものです。
ハリスは、幼鳥時には縞模様があり、成鳥もまた黒く美しい羽根です。
訓練で羽根が折れた場合には、接ぎ羽根にしたり、アクセサリーや小物などにもできますので、冷所で保存をしておきましょう。
おわりに
最後までありがとうございました。
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