5つの目標と基本メニュー
鷹の初期トレーニングでは、いくつかの目標があり、それを達成すために基本的な訓練メニューがあります。
私自身の経験から言うと、フライト訓練ではそのメニューを知るだけではなく、各メニューを段階で分け、その段階での目標を決めていく事が大切なようです。
鷹のフライトトレーニングの基本メニュー
フライトトレーニングの為の基本的なメニューには以下の5つがあります。
- 1『据え』
- 2『据え回し』
- 3『スモールステップス』
- 4『渡り(ひも付き訓練で行う事)』
- 5『ルアー訓練』
ただし、フライトの為には上記メニューの他、体重コントロール、肉色当て(ししあて)が必要になり、これらはフライトは勿論、鷹の状態を管理する上で重要な事項となります。
※肉色当てとは:猛禽類の胸の辺りにある竜骨突起という骨を触って、そこの肉付きがどのくらいなのかを確かめる事を言います。
5つの目標とは
私は、鷹をフリーにする前、購入元の鷹匠さんにその可否を判定してもらいましたが、その結果不合格となりました。
理由はロストをする可能性が高いから、というものでしたが、このロストする危険とは何か。
ここで、最も重要なのは餌への反応であり、餌を見せてもすぐに飛んでこないのであれば、ロストや回収困難になる可能性が高くなります。
その為、各段階における目標は、餌への反応を良くすることであり、以下の5つの目標が見えてきます。
- 目標1『据え』:グローブの上で餌を食べる事ができる
- 目標2『据え回し』:各ポイントで餌を食べる事ができる
- 目標3『スモールステップス』:各段階で餌への反応が良い
- 目標4『訓練紐でフライト』:高所や環境を変えて餌への反応が良い
- 目標5『ルアー訓練』:絶対的回収手段にできる
各目標の共通項
上記5つの目標で共通しているのは、餌をグローブに置いたらすぐに食べる、見せたらすぐに飛んで来るように訓練を入れなければならない、という事です。
鷹匠の訓練について調べると、据え回しや、紐をつけて飛ぶ練習とか、ルアー、体重管理の重要性といったものをネット上にもよく見かけます。
これらの練習が各段階に沿って行うものである事は容易に理解できましたので、鷹匠の助言の他、練習方法の一つとして参考にもなりました。
所が、段階を踏んでも思うような結果が得られない時期がありました。
今振り返ると、ただ、環境に慣れさせるために『据え回し』を行い、飛ぶ距離を伸ばす為に『訓練紐をつけてフライト練習』をし、狩りの練習の為に『ルアー』を振っていたからだと思います。
各目標の意義と練習内容の概要
では、何がいけなかったのか具体的な目標と一緒に振り返ります。
目標1:グローブで餌を食べる事ができる。
『据え』は、単にグローブの上で食べられるといううだけでなく、グローブに一口乗せたらすぐに食べてくれる、という事に意味があります。
目標の意義:最も安全場所である事を教える
鷹が餌を食べない理由は、警戒しているときですので、グローブの上で餌を食べない、あるいは餌を置いてから時間がかかる場合には、使役者との信頼関係はまだ築かれていないかもしれません。
その為信頼関係を築く上でも重要な最初の基本メニューが『据え・据え回し』になります(後述)。
給餌の基本と注意事項
フライトをしない場合でも基本的に給餌はグローブの上で行います。
細かく切った物(口餌)をピンセットなどでひと口ずつグローブの上に置いて与えます。
餌を与える際には、「ハイ」「ホツ」などの言葉を一緒にかけて、出来るだけ一口ずつ与えるようにします。
据えであろうとフライト時であろうと、グローブ上での給餌で最も注意しなければならないのは、大きな餌を握る方法は、グローブごと獲物認識をさせる為、基本的には避けるべきです。
目標2:各ポイントで餌を食べることが出来る
『据え回し』では、鷹がグローブ上で安定した姿勢が保持できる事も重要になります。
何故ならこの『据え・据え回し』で、鷹にグローブの上が最も安全な場所であることを教えなければならないからです。
フライトの基本は、どこまで遠くに飛ばせるかよりも、どんな状況でも必ず呼び戻す事ができる、という事に尽きる為、グローブの事が嫌いになるようではフライトは進みません。
その為、据えは、単に鷹をグローブの上に乗せておくことだけを言うのではなく、給餌の場として覚えてもらう重要な事項の一つになります。
据えの時間
据えの時間は、慣れるまでは数時間と言われていますので、ソファーに肘をかけておくと、長時間でも姿勢を保つ事ができます。
私は今でも訓練から帰った後には、1時間から2時間はソファーに腰を掛けて据え、この時に水分補給をさせています。

片足立ちはリラックスしている状態
据え回しの意味
据え回しとは、鷹が外の世界に慣れる為に行うものですが、この時鷹の全体を眺めつつ個体の性質を把握するように努めます。
ここで、外の世界に慣れさせるとは、自動車や飛行機の音、また人間に慣れさせるという事で間違いではないのですが、これは、触れあったり、騒音の中でも平常に過ごせるようになることだけを意味するものではありません。
つまり、外で餌を食べる事ができるかどうか、と言う事でもあります。
据え回しは“この期間行う”と言うものではなく、信頼関係を築く上でも重要な日々のトレーニングメニューになります。
具体的には、ポイントを決めてその地点に来たら口餌を与える、人やトラック、騒音がある時に注意をそらす為に餌を与えるようにします。
※口餌とは、小指の先端程度に細かく切って与える餌の事
写真↓:良い据え回しの例

安定している時の鷹の状態は尾羽が閉じている
目標3:各段階で餌への反応が良い

ステップ2 翼をひとうちする
スモールステップスは、止まり木から段階的に短距離を飛べるようにする屋外トレーニングで、基本メニューのうちの中間的段階になります。
ここでは体重を少し下げておきます。
- 脚で飛び移る
- 翼を一打ち併用する
- 離陸してすぐ着地する
- 離陸して「飛行」してから着地する
スモールステップスには上記4つの段階があり、これらは『質』の異なる行動であり、一つ一つ丁寧に訓練を行います。
このスモールステップスによれば、距離を徐々に伸ばす事に意味はないとされています。
実は私が最も苦しんだ失敗は、(無意味な)飛距離を伸ばす事に固執してしまった事です。
距離よりもまずは、この4つのステップの各段階でスムーズに進める事が出来たら次の段階に進みます。

9/23 スモールステップス4 離陸・飛行・着地
目標4:ひも付きでフライトの反応が良い

9/23 紐付きフライト高所訓練
スモールステップスで反応が良ければ、今度は高所からの呼び戻しを行います。
高い場所からの呼び戻しは、自分で救出できないような場所は避けます。また紐を長くすると反って危険のリスクも高くなりますので、無理はしないようにします。
高所と言ってもやはり高さをどれほど高くできるかではなく、前回よりも高くして、合図(掛け声や笛)をしてすぐに飛んで来ることを定着させる事が重要だという事を肝に銘じておきましょう。
目標の意義
いよいよフライトらしいメニューになりましたが、ここでもまずは短い距離から呼んで、グローブまで飛んで餌を食べるようにします。
重要なのは、飛距離を伸ばす事ではなく、餌を見せて呼んだときにすぐに反応する事ができるか、そしてそれを繰り返すことで行動を定着(条件反射)させると言う事になります。
餌への反応が悪い状態、つまり体重コントロールや練習が未熟な状態で距離を伸ばせば、紐が長くなる分、思わぬ方向へ飛んでしまい、不測の事態を招く事になります。
注意が必要なのは、紐が付いていると言う事は必ずしも鷹の安全を確保するものではなく、紐付きフライトだからこそ見られる事故がある、と言う事です。
まずは無理に距離を伸ばすのではなく、餌への反応を上げるようにします。
目標5:ルアートレーニングで反応が良い
フライトトレーニングで最も重要なのは、回収手段を持つ事です。
目標の意義
鷹のフライト練習の基本は、空腹を利用して餌を食べる為にグローブに戻る、という事に尽きます。
ですが、お腹がいっぱいになると高いところにとどまり、呼んでも餌を見せても回収する事が困難になる事があります。
その為、多少お腹が一杯でも呼べば必ず戻ってくると言う回収手段を持たなければならず、それがルアーに他ならないのです。

ヒヨコを1羽つけ、ご褒美にしテンションを上げさせる
通常の訓練では口餌をちまちま餌をもらっているので、ルアーにつけられた大きな餌をみると、鷹は喜んで食いつきます。
必ず付けた餌は全て食べさせ、据え上げではルアーをバレないように回収しなければなりません。
これは、据え上げが上手く行かず、鷹の脚から無理にルアーと取り上げようとすると、餌を横取りされたと思い攻撃したり、横取りを繰り返せば鷹は狩りを諦めてしまうからです。
全ての練習メニューに共通して言えますが、終了は、必ずうまくいったタイミングにします。
これは鷹に限らずコンパニオンバードでもそうですが、失敗をしたタイミングで練習中止をすると鳥は自信をつける事が出来ず、問題行動に移行していくからです。
練習がうまくいっていない判断
練習メニューをこなすにはその意義を知ったり、目標設定をすることで格段に効率があがります。
また本当に次のステップに行って良いのか、という指標にもなります。
最終的なメニューのゴールとしてはフリーフライトですが、練習がうまく行っているか否かの判断は、換羽期のフライトで見る事ができます。
通常鷹のフライトは体重を落とすことが前提(実際にはこれだけではありません)ですが、換羽期には羽根に栄養を十分に与える為、厳しい練習は避け、体重を増やす事に重点を置きます。
ですが、ハリスホークは愛情でコントロールできるとも言われており、換羽期に栄養を十分に取りつつもフライトは問題なく可能なはずなのです。
つまり換羽期でも、その個体のフル体重(丸)に近い状態を維持しながら飛翔コントロールができるのであれば、練習はうまく行っているということです。
ところが体重を9割以下にまで減らさなければコントロールが効かないというのであれば、練習がうまくいっているとは言えません。

6月:羽根を広げて休憩するのは、ロストの危険が高い状態。紐は外せません
例えば、練習時にこのような姿(写真上)をしていたら、紐を外せばロストすると思った方が良いでしょう。
また折角フリーにしても日々の練習を怠れば元の木阿弥になる事を覚えておき、換羽期でも、しっかり飛べるように練習を行いましょう。
そして日ごろの練習は、使役者自身に必要な練習なのだと言う事も忘れてはならないのかも知れません。
換羽期の過ごし方、基本練習の入れ直し(2年目)については後日投稿しますので、またそちらの記事も併せて参考にしていただければ幸いです。


フリーにする判断については、こちらの記事をご参照ください。


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